成長を促すコンペティション活用を目指して
2月19日のトップページで呼びかけ、全国の会員2000名(無作為に抽出)にご協力をお願いしたコンペ開幕直前アンケートには計394件の回答をいただきました。
コンペをより良い学び・豊かなステージ経験の機会にするための、先生方の創意工夫の数々を共有していきます。
コンペ準備期間から舞台を終えるまで、それぞれの時期に先生方がどのような工夫をされているのか、いただいたお声を抜粋して紹介します。
- 教室内だけでなく、他の教室のお友達とも弾き合い会や練習会をします。(榎本 佳子先生)
- 課題曲ばかりでは飽きがくるので、好きな曲や過去に取り組んだ曲を2台ピアノや連弾で楽しんでいます。(八田 寿美恵先生)
- コンペ学習ノートが役立っています。絵を描くことや曲について学ぶことがやる気と成長の糧になります。(中川 和子先生)
- 毎回レッスンの最後に録画をし、上達した部分をしっかり伝えた上で新たな課題を提示しています。(湊 菜穂先生)
- ピティナ以外のコンクールも並行して受検してもらっています。(高瀬 貴子先生)
- 各曲の課題を細分化した表を作り、どこまで出来たかチェックして見える形にします。(三村 亜紀子先生)
- この課題曲ができたらこんな曲も弾けるようになるよ、と将来に希望を持てるように説明します。(松永 由里先生)
- 教室で課題曲についての勉強会、大学生の先輩による課題曲演奏会を行っています。(川合 見幸先生)
- 曲について物語を作ったり、歌を付けたり踊ったり、絵を描いたりしてイメージを膨らませます。(大橋 幸恵先生)
- 無理なく反復練習できるよう、転調したり反対側の手で同じ指使いで弾いたりと楽しめるアイデアを考えます。(新田 恵理子先生)
- 他の人がどう弾いてるか興味を持って聴いてみるよう促します。(松田 紗依先生)
- 呼吸法を教え「笑顔で、心で歌いながら弾いてね」と伝えることが多いです。(青木 香澄先生)
- 通過すること、よい点数を取ることを目標に演奏するわけではないと本番前に再確認します。(平賀 実喜子先生)
- 今あるチカラが出せるよう、自分の魅力は何かをお伝えしています。(梅本 隆代先生)
- 本番の2週間から、当日朝からの自分をイメージトレーニングしてもらいます。(中羽 政美先生)
- 今日は素敵なホールで演奏できて嬉しいね、いつも通り気持ち良く弾いて来てねと送り出します。(長谷川 直美先生)
- 見た目の印象(ステージマナー)にも意識を向けさせます。(酒井 由美子先生)
- 本番に向けての注意事項をまとめたメモの表紙に「お守り」と書いた手作りお守りを渡します。(矢ノ下 智子先生)
- 点をとるための演奏ではなく、音楽家として舞台に立つよう、強く提案しています。(奥村 真先生)
- ポジティブになれる言葉をかけて笑顔で送り出します。手や指のストレッチも一緒にやります。(安東 佑由子先生)
- コンクール終了後には保護者の方の多大なお力添えに感謝をお伝えします。(田中 裕里先生)
- 生徒自身の感想や気持ちをじっくり聞いて、今後どうすれば良いかを一緒に考えます。(中川 知保先生)
- できたことと足りなかったことを話したうえで、コンクールはあくまでも上達の手段であることを伝えます。(中島 かをり先生)
- 頑張りを讃える教室オリジナルの賞状を作り、生徒に渡すとともに教室に1年間掲示しています。(今井 眞理子先生)
- 保護者の方と生徒それぞれに、採点票のアドバイスを元に良かった点と改善点をお話しします。 (田淵 礼子先生)
- 頑張った事は必ずプラスになると伝え、結果は会場や審査員が変われば変わる水物であることもお話します。(篠崎 みどり先生)
- コンペに参加できて良かった!と讃え、他の人が弾いた曲で好きな曲を弾いてみようと薦めます。(山路 三千子先生)
- 参加する前の段階でコンペを「成長の機会」ととらえ本番に向けて精一杯努力できることが価値だと伝えます。(吉田 祐子先生)
- 通常のテキストに戻ったときに成長した点が必ず見つかるので、その時に改めて褒めています。(植田 味香子先生)
- 講評で示された課題をクリアすることを新たな目標にし、力試しの場として秋のコンクールを提案します。(桃原 聡子先生)
1月25日にオンラインで行われた「コンクール相談会」には、ピアノコンクールの活用法を知りたいという熱心な19名の会員の皆様にお集まりいただき、須崎朝子先生(広島)西松亜紀子先生(東京)のお二人をゲストに、熱心な情報交換が行われました。
「後編」として今回は、ピティナ・ピアノコンペティションについて寄せられた質問・回答をピックアップしてご紹介します。
コンペにはどのような生徒さんをお誘いしていますか?
課題曲を弾きこなせそうな生徒さんには全員に声をかけています。まだ自宅に電子ピアノやキーボードしかないという方もいますが、コンペ出場が楽器をアップグレードさせるきっかけとなることも多いです。年齢の小さい生徒さんには、「まずは1曲弾いてみよう」「今度は2曲弾いてみよう」「じゃあコンペに挑戦してみようか」というように、段階を踏んで参加を促しています。(須崎先生)
四期の曲を一度に学習できる機会はとても貴重なので、初心者も含めて全員にお声がけしています。(西松先生)
選曲はどのようにしていますか?
選曲は指導者としてとても責任重大だと思っています。まず全曲弾かせた上で、本人の良さが一番表現できる曲を選ぶようにしています。譜読みの練習にもなりますし、色々な曲を知るという点でもいいと思います。(西松先生)
例えばA1級を受ける場合、どれくらいのレベル、教材、練習時間が必要ですか?
個人差があるので一概には言えませんが、アキピアノ教本の1~2くらいを目安にしています。(須崎先生)
トンプソン1巻~ブルグミュラーに入ったくらいが目安です。練習時間は、未就学のうちから毎日30分をコンスタントに続けてもらい、コンペの時期になったら1時間半~2時間を目指すようにしています。(西松先生)
コンペ期間は基礎練習などの他の教材と並行してレッスンしていますか?それとも課題曲のみの指導なのでしょうか?
ハノンなどの基礎練習はコンペの期間も取り組んでいます。本番直前になると、そこまでの余裕がないというのが現状ですが、4月くらいまではレッスン時間の半分を基礎練習に充てています。(西松先生)
小さい子は一度基礎教材を止めてしまうと、将来的に上の級へとチャレンジしていくことが難しくなるので、なるべく並行するようにしています。人によっては早い時期から課題曲だけに集中する場合もありますが、コンペが終わったら基礎練習を重点的に頑張るなど、年間を通して遅れることなくテキストを進められるようにしています。(須崎先生)
本番前には通常レッスン以外に特別なことをしているのでしょうか?
コンペに参加する生徒だけで弾きあい会をしています。他の生徒さんの演奏を聴くことで刺激を受けますし、保護者同士のネットワークも広がります。(須崎先生)
本番直前にホールレッスンをしています。教室だと耳が慣れてしまうので、新たな発見を得るためにも、いつもと違う楽器、違う場所でレッスンすることは効果的です。(西松先生)
課題曲CDの音源をどこまで参考にすべきか迷ってしまいます。生徒さんの個性も尊重したいのですが、ゲストの先生方はどのようにバランスを取っていますか?
他の人の演奏を聴くことは、耳を育てる原動力にもなるので、たくさん利用してほしいと思います。とはいえ課題曲CDをそのまま真似して弾けば受かる、というものではないので、生徒の持ち味をどう美しく聴かせるかというのが、指導者の腕の見せ所だと思います。(須崎先生)
最終的には本人の中から出てくる個性がないと魅力的な演奏にはならないのですが、予選・本選では基礎力が求められます。好き勝手弾くことだけが個性ではないので、ある程度の基礎力を身につけるためにもプロの演奏を参考にすることは大事だと思います。(西松先生)
コンペ審査の公平性について知りたいです。
ピティナの審査員派遣については、公平性を担保するために遠隔地からの派遣を徹底しています。氏名や指導者名を審査員に伝えることはないのでご安心ください。(本部)
私も生徒を出し始めたばかりの頃は、同じ先生の生徒さんばかり通っていたので悔しい思いをしましたが、それは指導者に経験も実力もあるからだと気づきました。それからは何度も会場に見学しに行き、どんな演奏をすれば通過できるのかを研究しました。審査をした経験から申し上げると、とてもシステマティックに進行するので、点数をつけた後で協議や調整をすることはできません。(須崎先生)
コンペで良い結果が出せなかったとき、保護者の方が大きいショックを受けてしまうことがあるのですが、どのようにフォローをしたらよいでしょうか?
保護者には事前に通過率の低いコンクールであることを説明し、その上で子どもの「悔しい」という思いを大事にしてほしいと伝えています。悔しさは頑張ったからこそ湧くもの。結果が出なかったのになんとも感じないようだったら、挑戦した甲斐がありません。「子どもが悔し泣きをしたらむしろ成功だと思ってください」と声をかけています。(西松先生)
記事作成にあたり指導者の皆様より寄せられた開催方法や運営に関するご質問 に、現段階での回答をまとめました。3月時点での方向性としてご参照ください。
詳細はこちら