ピアノコンクールへの参加は、じっくりピアノや曲と向き合い、そして自分と向き合う機会ではないでしょうか。コンクールへの準備は、参加する本人の努力に加えて、ご家族や指導者など周囲の方のサポートも大切なものです。今回は、コンクールの前後に、周囲の方がどのような言葉で応援されたのか、言葉がけの事例をご紹介します。ぜひ、心のこもった言葉がけで、本番の舞台へ送り出してさしあげてください。
コンクールには、私の教室から7~8割くらいの生徒が自主的に参加しています。『予祝』(本番後の喜びを前祝いする)という言葉があり、それはコンクールを控えた生徒にもメンタル的に良いのではないか、と思い、「本番が終わったときに、どうなっていたら嬉しいか」良いイメージを持つように伝えています。ある生徒が、2箇所の予選の内、1箇所で予選通過できず、落ち込んでいたのですが、本選に向けてのレッスンで、毎回のように、本番後のイメージについて、言葉がけをしていました。それに対して、「終わったときに、うまく弾けていたら嬉しいな!」と生徒自身が答え、それを毎回のレッスンや、家庭でもノートなどに言葉を貼って、日頃の意識に刷り込むことで、本番が近付くにつれて、「コンクールがすごく楽しみ!」と本番を心から楽しみにしている様子が見られました。当日も、緊張よりも「楽しみ!早く弾きたい!」という気持ちが勝っていたようで、そのまま実際に本番を楽しむことができ、「楽しかった!!」とワクワクした気持ちのまま、本番を終えることができたようです。保護者の方は、結果よりも、コンクールの本番を楽しそうに心待ちにしながら迎えるお子さんの様子が、何より嬉しかったと仰っていました。
コンクール前は、どうしても、それまで弾けていたところが弾けなくなったり、緊張感が増したりすることで、不安になりがちです。中にはお腹が痛くなる子も・・・。その原因は、実は親御さんにあることも多々あります。保護者の方が不安でいっぱいだと、特に小さいお子さんは、緊張をしてしまい、弾けなくなってしまう事が多いので、まずは保護者の不安を取り除く事をしています。「お子さんの緊張は、親御さんから移ることもありますよ!」と、まずは保護者に落ち着いていただきます。その後、生徒さんにレッスン時に上手に弾けたときの気持ち等を思い出させ、楽しんで演奏するように本番へ送り出します。又、身体を使って演奏前の準備体操等を一緒に行っています。 本番で止まり癖がついてしまった子がいましたが、上記のような事を行ったところ、しっかり最後まで止まらず演奏出来るようになりました。準備体操をする事により、緊張していた表情も明るくなり、楽しんで演奏出来た様子です。
コンクールのレッスンは、長期になると精神的にモチベーションを保ち続けることが難しく、本番までの中だるみや緊張に伴う戸惑いなどが見られる場合があります。一人一人の生徒さんの様子を見計らって、コンクール前のレッスンでは、自分と向き合うことの大切さについて言葉がけするように心がけています。生徒さんに対しては、「自分と向き合って努力することで、色々なことができるようになったり、また人とのご縁が出来たり、自分の新しい扉を開くことができるよ」と、コンクールのステージ経験を通じて、可能性の広がりを応援する言葉をかけています。また、不安や緊張が募られている親御さんに対しては、「いつも上手に練習に導いてくださり、ありがとうございます。何よりもお子さんが成長するということを楽しむことを忘れないでくださいね」と、常にお子さんの「こんなことができるようになった」という成長の喜びを感じていただくようにお声かけしています。コンクールには結果が付きものですが、結果が良い時には、結果に甘んじることなく気を引き締める言葉を、逆に思うような結果が出なかったときには、「いつ花が咲くのかは、人それぞれ。大切な事は諦めず継続する事です。コンクールを通じてピアノも心も成長された事をとても嬉しく思っています。本当によく頑張りましたね!」と前向きな励ましの言葉をかけて、次へ向かう気持ちのサポートになればと思っております。
- カッコ内はお子様の年齢