ピティナ・ピアノコンペティション

2025年度 A1~F級コンプリート賞 表彰式

2025年度
ピティナ・ピアノコンペティション
A1~F級コンプリート賞 表彰式

2025年8月22日(金)ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京・赤坂)で行われたコンペ祝賀会にて表彰式を実施し、全国各地から32名の受賞者が出席しました。
受賞者を代表して、濱田幸さん(広島県)さんが、福田成康専務理事より賞状を受け取り、受賞にあたってのスピーチを行いました。2023年度より新設されたこの賞、3年目となる今年度は144名の方が受賞されました。


表彰式レポート
受賞者の喜びの声
高校に入ってからはなかなかピアノを弾く時間が確保できず、コンプリート賞がなければ、E級やF級には参加していなかったかもしれません。コンペに参加し続けたことは大きな自信となり、ピアノだけではなく様々なことにチャレンジすることができていると感じています。
毎年の恒例行事になっていたので、こうして賞として形に残るのは感慨深いものがあります。ピティナは色んな時代の課題曲を弾けるので毎年出るのが楽しみでした。ピアノを続けるきっかけをくださり、ありがとうございました!
私は生まれつき片耳が聴こえませんが、先生が「ピティナの予選を通過できるレベルを保っていれば、どこで弾いても恥ずかしくない」と仰ったことが心に残り、忙しい時期も毎年4期に取り組んできました。結果、全ての級で予選を通過でき、コンプリート賞も受賞できて達成感でいっぱいです。片耳が聴こえないことでピアノを迷っている人の後押しになれたらいいなと思います。
私自身、こんなにも長くピアノを続けているなんて習い初めの頃は想像もしてませんでした。級が上がるごとに課題曲も難しくなりましたが、その分たくさんの曲に触れ、知識や技術を学ぶことができたので、とても感謝しています。
ピティナは音楽を学べる最高の機会であるとともに「この子また出てる!」という、顔も知らない友達ができたような不思議な気持ちになれる場でもありました。数年前に地区予選で共に戦った子が今では同じ学校に通い友人となっています。ピティナが繋いでくれた縁を大切に、これからもピアノを頑張りたいです。
コンプリート賞指導者 座談会

ピティナ・ピアノコンペティションのソロ部門A1級からF級まで全級に参加した生徒を表彰する「コンプリート賞」。8月22日に行われた表彰式に先立ち、コンプリート賞受賞者を輩出した9名の指導者が集い、福田成康専務理事も同席のもと座談会を実施しました。

  • 伊井 光子先生(愛知県)
  • 井口 愛弓先生(石川県)
  • 木村 真由美先生(北海道)
  • 小池 由美先生(長野県)
  • 佐藤 秀佳先生(栃木県)
  • 髙木 久美子先生(東京都)
  • 冨田 有香先生(大阪府)
  • 二本柳 奈津子先生(大阪府)
  • 林 公子先生(愛知県)

座談会で印象的だったのは、多くの先生がコンプリート賞を受賞した生徒を「本当に普通の子」と表現したこと。受賞する方の多くは、学業や部活動と並行してピアノに取り組んでいます。参加すると決めてあきらめずに続ければ、誰にでもコンプリート賞のチャンスはあります。
一方で、厳格な評価の場に身を置き続け、悔しい結果でも受け止めて次の一歩につなげるには心の強さが重要です。「コンプリート賞を目指す人はメンタルがしっかりしている。他者評価ではなく自分の成長に注目して努力できる心の強さがある」という意見もありました。

伊井光子先生

高校進学で一度ピアノを辞めた生徒が、「先生、コンプリート賞を取りたいのでまた指導してください」と教室に戻ってきてくれました。F級に挑戦し、目標のコンプリート賞を受賞。大学見学のついでに特級の演奏も聴きに行ったそうです。F級まで終えた生徒には、次の目標としてグランミューズ部門を勧めています。

井口愛弓先生

自分が指導を開始したばかりの頃から見ている生徒がコンプリート賞を受賞しました。共に歩んできた年月が形になったようでとても嬉しかったです。学業や部活との両立でなんとかピアノを続けているタイプの子は高学歴であることが多いので、受賞者の進路調査をしたら面白い結果が出ると思います。努力し続ける力と学力の間には、きっと相関関係があるのでしょうね。

木村真由美先生

コンペ挑戦をなんとか続けている生徒の場合、課題曲選びに気を配ります。平均律や古典のソナタ、ショパンエチュード等は1年かけて取り組みます。同じ曲を何年も弾いている子もいますが、作品の理解が年々深まるのでこれも一つの学びの形だと感じます。表彰式で全国大会の出場者と同じ舞台に立てることは、子どもたちにとって本当に誇らしい経験だと思います。

小池由美先生

私の教室でコンプリート賞を受賞したのは本当に普通の子です。コンペに壮大な目標を掲げるのではなく、日々の食事のように習慣にしています。ピアノが続くご家庭を見ると、保護者が長期的な視野を持っていると感じます。きらきら星を弾くのも苦労した子がF級まで到達するのですから、生徒の成長タイミングは人それぞれ。長い目で見ることが大事です。

佐藤秀佳先生

今年、初めて生徒がコンプリート賞を受賞しました。その子は医学部志望の高校生で、学業・部活動とピアノを両立して頑張っていました。コンペに参加し続ける子は、不安があっても挑戦を選ぶ心の強さ、努力する能力があると思います。またコンペの課題曲は秀逸な音楽学習カリキュラムだと思っていて、参加しない生徒にも進度の目安として示しています。

髙木久美子先生

教室で受賞第1号になった生徒は、「ピティナの全ステージをコンプリートしたい」と、23ステップ制覇に取り組みはじめました。過去に参加した写真もすべてピティナ・パスポートに挟み込んで記録していて、ピティナへの情熱は人一倍。社会人として働きながらステージに立ち続ける姿勢を尊敬していますし、彼女の意欲の源泉になってくれるピティナにも感謝しています。

冨田有香先生

今年コンプリート賞を受賞した生徒は、入賞することだけを目標とするのではなく「小さな頃から続けてきたことをコンプリートする」ことを目標に、自分で参加すると決め計画的に本番まで走りきりました。忙しい中でもやり遂げるという自分との勝負ですね。その頑張りを表彰していただけてとても嬉しいです。
一つのことを継続できるのは人間としての大きな強みですので、その客観的な証明として継続表彰授与証明書も積極的に活用しています。

二本柳奈津子先生

中学に入って忙しくなる生徒にとってはE・F級は高いハードルです。コンペ参加を諦めたであろう生徒がコンプリート賞という新たな目標が見つかり、通過するだけではなく自身の糧として継続することができています。この賞の制定前にF級まで制覇していた社会人の生徒たちもグランミューズ部門に参加しコンプリート賞をいただきました。今年高校生で初めて全国大会進出を果たした子もおり、「継続は力なり」を実感しています。

林公子先生

結果はどうあれ挑戦し続けることが素晴らしいと思うので、自分の価値観を形にしたようなコンプリート賞の創設を嬉しく思っています。小学6年まで一度も予選を通らず泣いていた生徒は、大学生になった今もピアノを弾いています。本番直前、彼女が練習する姿を見て保護者が涙し、私も泣いてしまいました。こうした感動は、生徒がピアノを続けてくれて、成長を間近で見守れるからこそ感じられるものだと思います。

コンプリート賞座談会を通じて見えてきたのは、挑戦し続けることが学習者に与える多面的な成長です。ピアノの技術はもちろん、困難に立ち向かう心の強さ、長期的な目標に向かって努力する力、そして自分のペースで成長を楽しむ姿勢。これらは、音楽を超えて人生を豊かにする力となります。コンプリート賞は、「普通の子」たちの「非凡な挑戦」を讃える賞として、これからも多くの学習者と指導者を支えていくことでしょう。

参加率のデータに注目
ソロ部門A2~F級別初参加率

コンペ初参加者の割合を、ソロA2~F級まで級別にみると、全体としては初参加率が前年より微減しているものの、A2級、A1級は前年より増加していました。

E級参加者の翌年E級・F級参加率

ソロ部門E級に参加し、翌年E級またはF級に参加する割合を調べてみたところ、2024年→2025年の翌年参加率は57.8%で前年を超え、過去5年の中で最も高い翌年参加率となりました。
コンプリート賞を目指して、入り口となるA1級の初参加が増え、またF級まで継続参加する方も増加したと言えるかもしれません。


2025年度受賞者一覧