ピティナ・ピアノコンペティション

X
instagram
youtube

ピティナ・ピアノコンペティション A1~F級コンプリート賞表彰式

ピティナ・ピアノコンペティション
A1~F級コンプリート賞
~表彰式~

2023年度より、ソロ部門A1級からF級まで、全ての級にコンプリート参加された方を表彰する「A1~F級コンプリート賞」を新設し、今年度は、301名が受賞されました。

11月5日(日)に実施した、表彰式のレポートと、コンプリート賞受賞者の指導者3名の先生方へのインタビュー記事をご紹介いたします。


表彰式

11月5日(日)、実地(東音ホール:東京・巣鴨)とオンライン(Zoom)のハイブリッドで、コンプリート賞の表彰式を行いました。
実地では、大阪、高知、沖縄など遠方からご参加の方も含め18名、Zoomでは、日本全国から34名の受賞者が出席されました。

受賞者を代表して、今年度の特級グランプリで、A2~特級まで全ての級をコンプリート参加されてきた鈴木愛美さんに、福田成康専務理事より賞状が授与され、鈴木さんには、記念演奏として「初めてコンペ予選通過できた思い出の1曲」である『チェルニー:100 番練習曲より「第 82 番」(2011 年 B 級参加時演奏曲)』と『ブラームス:8 つの小品 Op.76 より 第 1~2 番(2023 年特級参加時演奏曲)』を演奏していただきました。

「ピアノを弾いている時間が自分の大切な時間」「音楽が大好きで、音楽とともに過ごしてきた」ピアノを大切な軸として、続けてこられた受賞者の方々同士、お互いを称え合い、共感し、刺激を受け合う時間となりました。


指導者インタビュー
音楽的、人間的な成長を願って

水本 眞澄 先生(奈良県・正会員)

教室内でのコンペへの取り組み方

コンペ参加に関しては、私が勧めなくても自発的に参加を志す生徒たちが多く、課題曲が発表されると皆すぐに相談してきてくれることを毎年嬉しく思っています。教室では本番前に弾き合い会を実施して、級に関わらず演奏を聴き合うことも良い影響があるのではと感じています。課題曲が発表されてから、長いと約5ヶ月間じっくり曲に取り組み、レッスンの内容も濃く深いものになりますが、反対にたくさんの曲を短期間で仕上げて多くの作品に触れる時期も作れるよう、コンペ以外の時間の使い方も意識しています。毎年のコンペを通して、生徒たちそれぞれが 向上心を持って課題に取り組み、結果に左右されず、音楽的にも人間的にも一回りたくましく成長 してくれているように感じています。

初級(A1級頃)中級(C~D級頃)上級(EF級頃)の各時期の指導において、大切にしていること

初級の頃は 基礎訓練とイメージを音にすること を大切にしています。コンペの曲に取り組みつつツェルニー等の練習曲を欠かさないようにしながら、指や身体と耳の感覚を結びつける意識を育てるよう心がけています。中級の頃には、大人へと変化してゆく身体を上手に使えるよう、また課題曲の芸術性も高くなってくるので、ピアニスティックな話に加えて、 "楽譜から情報を読み取る"ことに一緒に取り組み、その大切さ を学べるように意識しています。上級になると一緒に曲の解釈を話し合いながら、私だけでなく他の先生方のアドバイスレッスンなど、 幅広い指導と刺激を受ける機会 を得てもらえるように努めています。

A1~F級コンプリート賞受賞生徒の歩みを振り返って

この度コンプリート賞を頂いた生徒たちとは、5~6歳からご縁をいただき10年以上を一緒に歩んできました。それぞれに色々な時期があり、嬉しさも難しさも一緒に経験し、彼女達がひとつずつ考え乗り越えていく姿から、私も沢山のことを学びました。幼少期からピティナに参加する中で、 目標を達成した時の忘れられない喜びは、その大きな糧 になってきたことと思います。 今、4人全員が音楽を学び続けることを選び、日々思い悩みながらも練習を重ねています。その成長をご家族と共に、音楽を通して見守ることができていることに感謝の気持ちでいっぱいです。

地に足を付けた学び

芝谷 香里 先生(大阪府・正会員)

教室内でのコンペへの取り組み方

コンペの会場に行って 「他の人たち・同年代の人たちの演奏を聴く」ことと「講評をいただく」こと で得られるものを大事にしています。コンクールの会場で、「お兄さんお姉さんが素敵に弾いていたあの曲を弾きたい!」と思えることが、生徒たちの原動力になっています。また、講評用紙は「数字(点数)ではなく言葉を見る」ように伝えています。褒められているところを一緒に喜ぶだけでなく、むしろ改善点への指摘に線を引いて「二度と同じことを言われないようにしようね」と確認し合っています。自分も審査をさせていただくようになって、先生方が手が痛くなるまで一生懸命書いてくださっていることを知り、そこまでして伝えようとしてくださった言葉、その中身をしっかり受け止めさせたいと思っています。

初級(A1級頃)中級(C級頃)の各時期の指導において、大切にしていること

A1級の小学1~2年生の時から、作曲家のお話を織り交ぜるなど、C~D級や大人の生徒さんとほぼ同じような対応を心掛けています。生徒たちを 「1人の音楽家」「尊厳をもった存在」として、同じ音楽家どうしのお付き合い を心がけることで、音楽の「本当の楽しさ」を早くから知ってほしいと願っています。
B級の後半(4年生)~C級くらいになると、それまでに習ってきたことを当てはめ、自分で考えることを学んでほしいので、あえて 「答え」を言わずに、質問だけを投げかける ようにしています。生徒たちの方から「ここはバランスに気を付けてみた」「フレーズを考えてきた」などと言ってもらえたら良いですね。最初は考える気のない子もいますが、「どうして先生のこういう説明や質問をしているか分かる?」というところから根気強く、繰り返しアプローチします。「1+2=?」という問いだけでなく、「足して3になるようにするには?」という問いもあり、 色々な方法や考え方を知っていること は、新しい曲に出会ったり、忙しい時間のなかで効率の良い練習をしなければならなくなったりしたときに、 自分で学び習得するための大きな力で、それが上級に繋がっていくのにも必要な力だ と思います。

A1~F級コンプリート賞受賞生徒の歩みを振り返って

今回、コンプリート賞を受けた生徒は、本人たちが一番びっくりしていました。振り返るとまさに(山あり谷あり、ではなく)「谷あり谷あり谷あり」という感じです(笑)。もちろんコンクールなので賞や良い評価が欲しいものだし、結果が付いてくる時も、結果が付いて来ない時もあるのだけれど、私自身も生徒たちも、 地に足を付けて結果に「一喜一憂しない」 で、結果がどうあっても接し方を変えないようにしよう、ということを心掛けています。

発表会では、連弾やアンサンブルで、小さい子と大きい子を組ませて、大きな子に選曲・プログラムを考えてもらったり、小さい子を引っ張ってもらったりしています。私がいないところで、年上の子が小さな子たちにアドバイスをしている様子などを陰からこっそり見て、「成長したのかな~」と実感することもあります。自分たち自身が考えて「やりたい」「やらなきゃ」と思ったほうがスムーズに進むので、そういう機会を創るようにしています。

基礎力を付け、継続・成長する力に

林 公子 先生(愛知県・正会員)

教室内でのコンペへの取り組み方

私の教室では、コンペは年間行事のように、毎年参加するのが自然な流れになっています。課題曲が発表されると、私よりも生徒の動き出しの方が早い事もあります。保護者がそれぞれ好きな課題曲の楽譜を購入されて、生徒が楽譜を山のように抱えてレッスンに来るのが恒例となっています。沢山の課題曲を先ずは弾いてみて選曲します。コンペの課題曲は学年に応じたレベルの素敵な曲が選曲されており、この時期にはこの 課題曲を軸に、グループレッスンで曲のアナリーゼや、音楽史や作曲家について学んだり 、課題曲はもちろん、同じ楽譜に収載された曲を どんどん読んだりすることで、譜読みの力、演奏力 をつけさせています。

初級(A1級頃)中級(C~D級頃)上級(EF級頃)の各時期の指導において、大切にしていること

初級の頃は、まず「楽しい」と思えることが大切ですが、楽しいと思えるためには 基礎力が必要 になります。その基礎力をコンペ課題曲を学びながら、培っていきます。 「認めて ほめて 愛して 育てる」 という教育研究家の七田眞先生の言葉をモットーに、とにかくまずはコンペに参加して、課題曲を準備し、ステージで一人で弾けたという事実を認めて、ほめます。結果にはこだわらず、むしろ、この時期に、予選を通過できない経験をした方が、学びが大きいですね。 うまくいかなかったときに、次どうするか 、それこそが学び、成長の機会になると思います。
中級は、初級の頃に基礎力が身に付いていると、 弾くことが楽しいと思える時期 になるかと思います。読譜力が付いていれば、「この曲も弾いてみたい」「あの曲にもチャレンジしたい」というモチベーションが湧いてくるので、D級以降につながっていく気がします。
上級の頃になると、曲が難しくなるので、ここまでくると、 「この曲だとあなたの良さが出せそう。この曲をやってみない?」と、私の方から、提案し、背中を押す こともあります。曲の難易度が上がると、言うまでもなく、ここでも演奏する為の基礎力が大事になりますので、いかに初級の頃にしっかり基礎力を付けておくか、いかに精神力を付けていくかということが、その後、上級に至るまで継続していくポイントになるかと思います。

A1~F級コンプリート賞受賞生徒の歩みを振り返って

この度、コンプリート賞が創設されたこと、そして今回8名の生徒が受賞できたことは、本当に嬉しいことだと喜びを噛みしめています。また、ここまで頑張り続けてきた生徒達の事を誇りに思います。
この生徒たちは、みんな仲がよく、幼児のリトミックレッスンの頃から 一緒に学び、励まし合い、支え合って育って きました。どの子にもそれぞれに想い出があり、思い悩んだこと、嬉しかったこと、予選落ちしたこともあれば、全国で入賞したこともあるなど、色々なエピソードが思い出されます。
毎年のコンペの結果は良いときもあれば、そうでないときもあり、様々ですが、継続して何度も参加していれば、そのときの結果は通過点の1つに過ぎません。 どんな結果も受け止めて、次に進んできた「継続」 こそが、この生徒たちの力になっていると思います。この力はこれからの人生でも「生きる力」となってくれると思います。