参加者インタビュー:山中瑛理子さん
参加者インタビュー
山中瑛理子さん(グランミューズ部門A1カテゴリー金賞)
音楽大学を卒業し、ブライダルオルガニストやピアノ講師の仕ことも得て、刺激も不満もない生活を続けようと思っていた私が、30 半ばでピティナ・コンペティションに挑戦しようと思ったのは父のお陰です。決して仲の良い父娘ではありませんでしたが、余命宣告を受けた後病を受け入れ淡々と人生の終い支度をし、最後の日まで生を全うした姿を見て、自分は今後どう生きるべきか改めて考えるようになり、自分の音楽を追求したいとの思いで参加を決めました。
参加にあたり1 日2 時間以上練習すると決めました。練習時間をスケジュールに組み込むことで短時間でも 集中して取り組むことができています。
ピティナの審査員の寸評には新しい着眼点やより良い演奏をするためのヒントがありましたし、様々なピアノで同じ曲を演奏したことで、楽器や空間に応じて表現や弾き方を微妙に変化させる術も身に付きました。何より他の参加者の皆さまを目の当たりにし、全国にはピアノ演奏に情熱を注ぐ大人がこんなにいるのかという驚きと同時に、それまで感じていた年甲斐もなくコンクールを受けているという後ろめたさがなくなり堂々としていられるようになったことが一番の収穫だったように思います。
音楽は衣食住に直結するものではなく、嗜好品の一つにすぎないのかもしれません。しかし、ある音楽作品やある演奏を耳にして身体の芯から震えた時、この世界を理解できる人間で良かったと心から思うのです。全ての感情を取っ払ったところにある感動を味わう体験は人生の醍醐味ではないでしょうか。多くの子どもたちにその感動の瞬間を知ってほしいと願っていますし、もしそれが音楽に関わるところにあったならこれ以上の喜びはありません。
(会報OUR MUSIC 366号掲載記事より)