ピティナ・ピアノコンペティション

X
instagram
youtube

コンペ申込開始直前! 審査員・課題曲委員 それぞれの観点にふれる

コンペ申込開始直前!審査員・課題曲委員 それぞれの観点にふれる

ピティナ・ピアノコンペティションはピアノを学ぶ子どもたちの「定期テスト」的な存在であり、若手ピアニストの登竜門としての役割も果たしています。一方で第1回のコンペが企画された動機は「ピアノ指導者の研鑽」でした。それは今も主要な目的の一つです。ピアノ指導者の団体としては「あたりまえ」の動機でしたが、めずらしい成り立ちのコンクールかもしれません。

そのような考えで作られたピティナのコンペは「会員の方々の手で作られてきた」コンクールでもあります。参加者の皆様は必ず「審査」を受けますし「課題曲」を演奏しますね。コンクールの根幹である審査員や課題曲を選ぶのもやはり、ピティナ会員の皆様です。

今回の記事では審査員の派遣や課題曲の選定にまつわる取り組みやその思いを紹介します。今後の練習やステージでの演奏で、活かしてみてください。


審査
採点の目安について
~この点数は高い?低い?~
7点台をつけられるような演奏とは思えない!
他の先生は○○点だったのに一人だけ低い点数だった

例年、参加された方々からは点数に関するご意見が寄せられています。

審査員の間では点数の「目安」を設定していますが、全体に点数を高めにつける方、決まった数の参加者にしか7.8以上を付けない方針の先生もいらっしゃいます。ピティナのコンペではフィギュアスケートのような明確な加点のルールなどを設定していません。
また、 700名もの審査員がいらっしゃり、専門とする音楽分野や重視するポイントはそれぞれ異なりますので、ある程度点数の「ばらつき」がでることは避けられません。

点数のばらつきによる影響を軽減するため、偏差値や順位点の導入など、各種シミュレーションを行っていますが、現在の制度から変更しても順位が変わるケースはごく僅かであることが分かっています。いずれにせよ、平均で「7.8」以上がついていれば予選通過の可能性があります。皆様には点数の高低で「一喜一憂」しないことをお勧めします。

コンペは普段レッスンに通っているピアノの先生の指導方針とは少し違った視点での評価・寸評を得られる機会でもあります。今までに受けたことのない指摘や、また自分では気づかなかった「よいところ」への評価があれば、採点と併せて見直してみましょう。

審査
ステージで気になる傾向
~ステージで気になる傾向~

「ピティナ弾き」「ピティナ型のお辞儀」といった言葉が話題になることがあります。ピティナが特定の「弾き方」や「お辞儀」を推奨することは過去も現在もありませんので、「ピティナ弾き」がどういったものなのかを特定するのは難しいようです。「お辞儀」はみぞおちに両手を添えて頭を下げる、というスタイルを指すことが多いようですが、これをすると「有利になる」ということはもちろんありません。
審査結果に影響しそうなマナーとしては「演奏前に時間をとりすぎる」傾向が、近年指摘されています。ピティナ事務局でも演奏の記録などを分析したところ、演奏前や曲と曲の間で長い時間、椅子に座った状態で30秒もの時間をとる演奏者がいました。これが即時減点や失格になることはありませんし、準備ができていないまま焦って演奏を始める必要はありませんが、「長すぎる準備時間」は好印象ではなく、審査員の見方が厳しくなる可能性はあります。また、後述の「カット」位置にも影響します。

  • 年少の級の場合、演奏される前に補助ペダルの設置などで、ある程度の時間が必要なケースもあります。その場合はもちろん間違いが起きないよう、焦らず、着実に進めてください。
審査
演奏の「カット」について
演奏時間が平等ではなかった
他の人とはカットされる場所が違った。一定にするべきではないか
2曲めがほとんど演奏できなかった

上に掲げたのはカットに関する代表的なご意見です。

曲の途中で演奏の停止を指示される「カット」はコンクール運営の都合によるもので、音楽芸術を大切にする観点から「推奨されるべきではない」あるいは「カットをしてはいけない」というご意見もあります。ピティナのコンペティションでは審査員もピティナ事務局も進んでカットをしているわけではありませんが、会場の都合や参加して下さる方が多数となった場合には止む無く行うことがあります。

「演奏時間が平等」であることは努力目標としており、極力差がないようにしていますが、まったく同一にしてはおりません。選ばれた曲の長さや性質などから、審査に支障がない範囲で、演奏時間は変動することがあります。

「曲のどの部分でカットをするか」については、事前に審査会議で確認されますが、厳密に「どの小節、どの音で切る」ということまでは決めません。演奏される曲の組み合わせや、上述の「準備前や曲間の時間」のとり方によって、カットの位置が異なる場合があります。

「2曲めがほとんど演奏できなかった」というケースについて。やはり「準備前や曲間の時間」のとり方などによって「1ページ目の途中でカット」「曲のクライマックスを演奏できなかった」というケースが生じることがあります。ピティナ事務局としても極力避けたい事態であり、またそのような状況になった参加者に対して、目安よりも長い時間演奏を続けてもらうこともありますが、限界もあります。審査・採点は可能であると判断してカットを行っておりますので、審査員の判断を信頼していただきたいと思います。

一方、当日の欠席者が多いなど、状況が許す場合には、予定していたカットを行わないこともあります。ソロ部門のD級以上などでカットされる可能性が高いソナタの再現部から終結部が「明らかに練習不足と感じられた」といった報告がされることもあります。審査員はじめ運営者一同としては、参加者の皆様が「カットのあるなしに関わらず最後まで準備される」ことを願っています。

「カット」にまつわる問題は多いのですが、今後も「審査」「課題曲」にまたがる課題として、改良に取り組んでまいります。ステップのフリーステージやオンラインのオーディションなど、カットが不要な、ピティナ内外の発表の場を併用していただくことも、お勧めいたします。

課題曲
楽譜の選びかた

コンペティション出場に際して、多くの方がまず行うことは課題曲を決め、楽譜を購入することだと思います。YouTubeなどを通じて演奏に接する機会が多い現在では「好きな曲が課題曲だからコンペティションに出る」という方も多くいらっしゃるかもしれませんが、楽譜は必ず入手することになります。

近年「楽譜の選びかた」が様々な場面で話題になります。

コンペティションが始まった1970年代と比べて、現在では同じ曲でも非常に多くの楽譜が選択できるようになりました。出版された年代や編集方針によってかなりの違いがありますので、指導者と参加者の方でよく相談していただき、出来る限り多くの楽譜を参照されることをお勧めします。

2021年末に行ったアンケートでは、300人の指導者(2021年コンペA2〜C級指導者対象)から「ひとつの課題曲について参照する楽譜の版の種類(※)」について下記のように回答が寄せられました。

  • 楽譜指定の曲を除く
グラフ

下記の動画は音楽学者の今関汐里さん(ピティナ研究会員)によるレクチャーです。楽譜にはどのような種類があり、それぞれどのように使うことが想定されているのかを説明する内容です。今後楽譜を購入するたびにいつも意識することになる観点をお伝えしようと試みています。楽譜選びの面白さに目覚める方もいらっしゃるかもしれません。

楽譜の選び方~基礎編

応用編は「ブルグミュラー」を例とした選び方の実践編です。身近なブルグミュラーの楽譜選びに使って頂き、その後に基礎編をご覧いただく、という使い方もできそうです。

課題曲
2022年度課題曲
~ A2~C級 注意すべきポイント~

上記のように、様々な意図を持って課題曲が選ばれています。課題曲をステージで演奏されるに際して、注意していただきたい点があります。課題曲選定委員のお2人による解説動画で、要点をご紹介します。

笹山美由紀先生
田中貴子先生
◆ コメント
審査員選考委員長 秋山徹也先生

審査員選考につきましては、2022年に一つの転機を迎えました。あたらしく審査員に加わっていただく方々には、審査現場へ向かう前に、オンラインでの審査体験を積んで頂く制度を開始しました。コロナ禍で多くの音楽イベントが中止になり、2020年度はコンペティションもほとんどの級が中止になる影響を受けました。一方で、急速なオンライン技術の普及により、それまでにはなかった多くのことが可能になりました。審査員選考委員会では、「研修制度」を発展させ、審査員の先生方も継続的に学べる仕組みを整えたいと考えています。

◆ インタビュー
課題曲選定委員長 本多昌子先生

課題曲の選定には、それぞれ深い専門性を持った課題曲委員の先生方が関わってくださっています。
小さい方の級、大きい方の級、連弾部門など、それぞれの教育段階にふさわしく、参加者の演奏力を向上させ、半年間楽しく付き合える曲を探すため、多くの時間と知識を惜しみなく注いでくださっています。
情報化社会の波は音楽も例外ではありません。ご存じのように、同じ曲でも多くの楽譜が出版されていますが、新しく出版されるものほど、最新の研究成果が盛り込まれている傾向にあります。しかし、新しい解釈の追加という側面が多く、古いものが間違っているというわけでもありません。コンペに参加される皆様と同じかそれ以上に、課題曲を選ぶ側も、審査員も、ともに学びが必要であることを痛感しています。