コンペインタビュー~審査員をつとめて(1)
2021度のコンペティションで審査員を務められた先生方の中から、2名の先生に審査のご感想や参加体験の活かし方を伺いました。
まずはこのパンデミック禍で、情熱を絶やさず一生懸命に取り組み演奏をした皆さんと、ご指導された皆様に敬意を表します。私自身、「A3 級検定」というカテゴリーがあった時代からほぼ毎夏コンペティションに参加して育ってきて、2021年の夏は審査員という立場で関わることになり、とても感慨深い気持ちです。。
審査にあたり、歴代の講評用紙を見返して驚いたのは、あとあと高校・大学や留学先、マスタークラスでお世話になるたくさんの先生方に審査をしていただいていたということです。当時自分がどのような演奏をしていたのかはもちろん、音楽に対してそれぞれの先生・先輩方がどのような観点を持っていらっしゃったか、今読むとまた違った視点で、感動を持って受け止めることができ、手紙のような存在に感じました。限られた時間でのコメントはなかなか大変ですが、私自身の経験を基に大切に書かせていただきました。
指導する際にもたびたび感じることですが、教わったことを自分なりに消化して応用・発展させていく力、そして「自発性」を持って学ぶことを楽しめているかどうかが成長に大きく作用してくるポイントだと思います。それらは演奏に顕著に表れます。それぞれの環境やペースがあるとは思いますが、「ピアノを弾く」ことだけにとらわれず、さまざまな世界へ目を向け、思考を柔軟に、豊かに持つ手段の一つとして、「音楽する」ことと向き合っていただければと願います。
私自身、コンペをB・C・E・Jr.G・特級と経験し、現在、ピティナとは、コンペの審査をはじめ、課題曲選定委員、ステップアドバイザー等で携わっております。
2021年の夏は、予選から全国大会にかけて8地区、本当にたくさんの演奏を聴かせていただきました。コンクールという緊張の舞台で実力を発揮するのは、並大抵のことではありません。本番というのは、弾き手の姿がありのままさらけ出される、そんな瞬間ではないでしょうか。そこで最も問われるのは、弾き手と音楽の関係性、そして、「聴く」感覚にあるのではないかと思います。
ただただ音楽へのあこがれをもって弾くのもピュアな美しさはありますが、それだけでは聴き手の心を打たずして、自己満足に終わってしまいかねません。まず、作品の理解と解釈を大切に…そのためには音楽の文法の習得が欠かせません。時々、上級でも気合いで音を並べ立てたような演奏が見受けられ、残念に思いつつ、導入時からの指導の在り方も考えさせられました。成長段階に沿って、技術の習得と音楽内容の把握が有機的に繋がり合うことにより、専門に進むかどうかに関わらず、それぞれが音楽と仲良くなり、さらに音楽を通して物事を考える力も育まれるのではないでしょうか。
また、「聴く」ことについて、自らの音を注意深く聴くのはもちろん、あらゆる演奏に触れたり、あるいは心の中にある音楽に耳を傾けてみたり…色んな聴き方ができればできるほど、音楽性豊かになり得るでしょう。色々と申し上げましたが、それらは全て私自身に返ってくること…日々ピアノに向き合う皆さまとともに、私も精進してまいります。