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- 特級とは
「特級」は、ピティナ・ピアノコンペティションの最上位に位置する、年齢制限のないクラスです。特に、第1位=「グランプリ」受賞者には、国際的に活躍する音楽家を目指すべくプロフェッショナルなサポートを提供するほか、ピティナの顔として様々な社会活動への参加も企画します。特級への参加を通じ、すべての参加者が自らの音楽家としての在り方・生き方を見つめていただくことを大きな目標としています。
「特級」は、参加を通じて、国際コンクールにも通用するピアニストを輩出することを目的としているため、課題や日程の設計においても、国際コンクールの準備になるということを非常に重視しています。
古典ソナタ、ショパンとそれ以外のエチュード、新曲課題、ピアノコンチェルトなど、国際コンクールで必ず課される課題をまんべんなく含みながら、のべ2時間半以上の演奏にたえうるレパートリーを準備・演奏します。演奏家として、レパートリーの量や種類は大切な資質であり、国際コンクール参加を考えるスタートラインとなります。
下のグラフは、曲の重複や予備予選の有無、自由選択の場合の計算やコンクールの全体スケジュールなどに誤差はありますが、主要な国際コンクールの本審査で準備し演奏する課題量の比較目安です。
中規模以上の国際コンクールでは、40分以上の演奏が複数回、各ラウンドで課されます。リサイタルをこなすだけのスタミナと完成度を維持しつづけられるかは、10分、20分という短い時間ではなく、1時間近くステージに立ち続けることで初めて真価を問われます。セミファイナルは、45~55分のリサイタル形式とし、コンサートピアニストとして聴衆の関心を惹き続けられるかという、プロとして非常に重要な能力を問うています。
特級三次予選が終わり、セミファイナリストが発表されるタイミングで、2週間後に演奏する新曲課題の楽譜をお渡しします。短い期間で、作品の大枠をつかみ、一定以上のクオリティで再現する能力は、プロの演奏家として大切な資質です。
特級三次予選は、二次予選直後、中1日でコンチェルトの1つの楽章をピアノ伴奏者と演奏します。公式伴奏者のピアニストとは初顔合わせ。短時間で、自身の求める音楽の姿を伝え、アンサンブルとして一定の形に仕上げる能力は、演奏家として必須のものです。
一方で、サントリーホールでプロの指揮者・オーケストラと共演する「ファイナル」は、指揮者打合せ、オーケストラリハーサル、当日のゲネプロにそれぞれ充分な時間を取り、共演経験そのものが、その後の人生の音楽的な糧となるように入念な準備を保証しています。
6月から行われる予選は、二次・三次・セミファイナルと徐々に間隔を短くし、セミファイナルの後は、翌日に指揮者打合せ、翌々日にオーケストラ練習、3日後にゲネプロとファイナル本番と、体力的に最後に向けて厳しくなるように設計しています。これは、すべてのラウンドが一気に行われ、勝ち進むにつれて演奏のほかに取材等でも忙しくなってくる国際コンクールを意識したものです。
セミファイナル~ファイナルには、毎年、3~4名の海外招聘審査員をお招きしています。審査員には、国際コンクールの審査や入賞者の指導、海外音楽祭での演奏や教育など、現役で国際的に活躍しているピアニスト・ピアノ教授を厳選し、かつ、常に新しい審査員を招聘することで、新しい視点を取り入れるとともに、海外に向けて日本のピアニストのレベルをアピールすることにも貢献しています。表彰式後のパーティでは、海外招聘審査員から直接じっくりアドバイスを伺う時間を設けています。
2018年より、ファイナルを、日本のクラシック音楽の殿堂として数多くの巨匠・名匠が伝説的な名演を生んできた「サントリーホール」で開催しています。
良質なホールでの緊張感あふれるステージ経験は、演奏家にとって、何にも勝る勉強です。
ファイナルでの演奏は、国内を代表する一流のオーケストラと指揮者に依頼しています。日本の音楽シーンをリードしてきた素晴らしい音楽家たちとステージ内外で同じ時間を過ごすことで、プロフェッショナルを目指す心意気を醸成します。
各段階の審査員には、国内外で活躍し、自らの音楽に真摯に向き合いながら、教育的で温かい視点を持ち合わせた一流の音楽家をお迎えしています。世代や知名度にこだわり過ぎずに、若い世代の審査員も積極的に登用し、フレッシュな観点を評価に取り入れています。一方で、経験豊かな教育家ならではの審美眼にも深い信頼を置いています。常に「この音楽家に審査していただくことは、参加者の皆さんにとって幸福な音楽的体験かどうか」を最も大切にしながら審査員を依頼しています。
「特級ファイナル」は、ピアノコンクールの本選であると同時に、4人の白熱したピアノコンチェルトを一度に体験できる絶好の機会です。「特級」は、早くから、「聴衆にいかに楽しんでもらうか」をテーマに、他のコンクールに先駆けて、様々な新しい取り組みを行ってきました。
2002年から開始した「聴衆賞」は、来場者の投票による受賞者を決定する点は今ではすっかりお馴染みですが、「入場料総額の半額を授与」というユニークな試みを展開しました。また、2008年には、国内音楽コンクールではいち早くインターネットによるライブ配信を実現。また、音源のYouTubeでの公開、オンライン聴衆賞、学生審査員賞、Twitterでの解説中継、ゲネプロ見学、事前レクチャー、コンペ参加者優待など、あらゆる観点からの聴衆開拓を模索し続けています。