2020年度特級グランプリに輝いた、尾城杏奈さん。幼い頃からコンペティションへの参加を積み重ね、ついにたどり着いたファイナルのステージでは、大曲ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を見事に演じきりました。そんな尾城さんに、インタビューを実施!今までの歩みから、本番の衣装のことまで、じっくり語っていただきました。Q&Aコーナーやお写真を交え、新グランプリの素顔をお届けします。
名前を呼ばれた時は本当に信じられませんでした。でも、友人や先生方からたくさんのお祝いのメッセージをいただき、また毎日いろいろなイベントにお呼びいただき、実感が湧いてきています。
振り返ってみると、小さい頃からコンペを受けてきたことが、今回の受賞に繋がっていると思います。また、今までも、今回も、自分一人の力で成し遂げられたのではなく、いつも支えてくれる家族、私の良さを引き出そうと指導してくださる先生方、応援してくれる友人の存在がとても大きかったです。いつも周りの方々への感謝を絶やさないようにと思っています。
特級には5回チャレンジしてきました。一次を通過できなかったこともありましたが、あまり落ち込んだり塞ぎ込んだりしない性格なので、ファイナルのサントリーホールで演奏することを目標に、今回も挑戦しました。セミファイナルを通過した時は、本当に嬉しかったです。サントリーホールの響きをステージ上で味わえたことも、一生の思い出になりました。
今回は今までの反省を活かして、「絶対不安のないよう、しっかり準備すること」がテーマでした。もともと計画性にはあまり自信がないのですが、学部の卒業試験の時に取り組んだ思い入れのある曲などを取り入れて、一つ一つのステージをきっちり組み立てていこうと思いました。その中でもセミファイナルの準備は、新曲を含んだ1時間というプログラムを、短い準備期間の中でまとまりのあるステージに仕上げるという点でとても大変でした。3日後にあるファイナルも並行して練習するのも重かったですが、本当に良い経験になりました。 また、コロナ禍での開催ということもあり、事前に演奏する予定のコンサートが中止になってしまい、バルトークのエチュードとベートーヴェンのピアノソナタ第27番は、セミファイナル当日が人前で初披露の日となってしまったのですが、今思うと印象深い出来事です。ホールで演奏できることの喜びを、改めて実感することもできました。 今回は、ライブ配信で二次予選からリアルタイムに演奏が放映されて、遠方の知り合いの方や、初めて演奏を聴いてくださった方からたくさんの応援メッセージを寄せていただき、励みになりました。
2日間でたくさんの学びがありました。前日のリハーサルでは、私がどんどん先に行ってしまったり、サントリーホールでのゲネプロではあちらこちらから音が聞こえたり、自分と他人の耳に入る音の違い、感覚の違いに苦労しました。リハーサルの時の録音を繰り返しスコアを見て確認し、ホールにどんなふうに音が飛んでいくか、できる限りイメージを膨らませて臨みました。本番では、指揮者の先生やオーケストラの方々の温かいサポートの中で、ホールの響きを確かめながら演奏できたと思います。後日自分の演奏を聴いてみて、和音の重厚感の出し方など、課題もたくさん見つけられました。この経験を今後に活かせたら良いなと思います。
まずは修士課程の勉強を頑張って、その後留学もしたいと思っています。今取り組んでいるピアノ指導も、続けていきたいです。小さい子のピアノを聴いていると、新しいインスピレーションをもらうことができて、自分の音楽の糧にもなっています。
将来的には、「また聴きたいな、コンサートに行きたいな」と思ってもらえるようなピアニストになれたら嬉しいです。
- 12月頃
- 3月頃
- 3月~7月
二次予選への準備
- 8/3
演奏し始めて緊張を忘れることができたのですが、それでもテンポが速くなって先へ先へと焦ってしまい、表現しきれなかったところがあり、心残りのほうが多かったです。
- 8/4
- 8/5
- 8/6
掲示発表は久しぶり。掲示用紙がくるくると開かれていく瞬間は緊張します!おそるおそる確認しました。。
- 8/7~8/17
- 8/18
発表は、例年通り普通に掲示かと思っていたら、表彰式みたいなスタイルでインタビューもあったので驚きました!あのような形でインタビュー(ヒーローインタビューみたいでした)されたのは初めてです。「念願のファイナル!」とテンション最高潮でした。
- 8/19~20
- 8/21
けれど「本番まで時間もないし、落ち込むのはやめよう」と決めました。ゲネプロで少し手ごたえがあり「ここで弾かせてもらえることに感謝して、本番は楽しもう!」という気持ちに切り替えられました。順位のことなどもちろんまったく考えていません。
- 8/22~
- 神奈川県横浜市で生まれる
- 4歳より藤代のりこ先生に師事
- 初めてのステップ&コンペティション参加
- 全国大会に初入賞(A1級ベスト40賞)
- 日比谷友妃子先生に師事
- B級銅賞、連弾初級A全国奨励賞
- 紫金山合奏団とモーツァルト「コンチェルト・ロンド」を共演
- プリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団と「ハイドンコンチェルト1番」を共演
- 連弾初級A全国奨励賞
- 2台ピアノ中級全国優秀賞(第1位)
- 連弾初級B全国奨励賞
- 全日本学生音楽コンクール小学校の部 東京大会第1位
- 北鎌倉女子学園中学校音楽コース入学
- Jr.G級入選
- 山手岩崎ミュージアムにて初リサイタル
- 連弾上級全国奨励賞
- 全日本学生音楽コンクール中学校の部 全国大会 第1位
- 鎌倉小・中・高 学生音楽コンクール 総合1位
- Jr.G級ベスト7賞
- ボナッタ先生の招きでエッパン国際 ジュニアアカデミーを受講(イタリア)
- 横浜クラシックコンサートに出演
- 東誠三先生に師事
- 東京藝術大学音楽学部附属音楽高校入学
- 福田靖子賞選考会入選
- パデレフススキアカデミー(ポーランド)を受講、トルン交響楽団とショパンピアノ協奏曲第2番を共演
- ショパン国際ピアノコンクールin ASIA プロフェッショナル部門銅賞
- 特級セミファイナリスト
- ピアノトリオ「ベアトリーチェ」名古屋、 広島、横浜三都市ツアーが満員御礼
- 東京藝術大学音楽学部入学
- 野島稔・よこすかピアノコンクール第3位
- ピアノ協奏曲フェスティバルにてシューマンのピアノコンチェルトを演奏
- よこすか芸術劇場にてリサイタル
- 藝大フィルハーモニア管弦楽団とラフマニノフのピアノコンチェルト第3番を共演
- ピアノ協奏曲フェスティバルにてリストのピアノコンチェルト第1番を演奏
- 日韓交流演奏会in東京藝術大学に出演
- 教育実習
- アンドラーシュ・シフ氏のマスタークラスを受ける
2020年度特級グランプリの尾城杏奈さんには、大人の方だけでなく、小さな子どもたちからもたくさんの注目が集まりました。演奏だけでは分からない(!?)、素顔の尾城杏奈さんの魅力に迫ってみました。
4つ上の兄と、2つ下の弟がいます。兄と弟にはとてもかわいがられて育ち、今でも仲がいいです。3人の中では一番度胸が据わっていて、決断も早いと言われます。
小さい頃、母(※尾城利里子先生)の教室の発表会で、兄や弟と連弾した思い出があります。休日には父と兄弟とでサッカーをしたり、試合を見に行ったりするのが好きでした。
赤ちゃんの頃にもらった赤いトイピアノが好きで、歌いながらよく弾いていたそうです。2歳ごろからピアノに興味を持って、4歳の時から習い始めました。
幼稚園の頃はケーキ屋さん。お菓子作りが好きで、今も家族の誕生日ケーキなど作っています。
小学生の頃からピアニストになりたいと言っていたようです。文集にもピアニストと書いていました。5年生ぐらいの時に、門下の先輩が出ていた藝高の公開演奏会に行って、私も藝高、藝大に行きたいなと思ったのを覚えています。
覚えていません!でも、緊張しないタイプで、人前で弾くのも好きだったので、楽しんで弾いたようです。
他の参加者のレベルの高さ、本番直前まで楽譜を一生懸命に見ている姿にびっくりしました!
ソロだけでなく、デュオでお友だちと一緒にやることで、ピアノの楽しさをたくさん感じて欲しい、という母の願いからです。
デュオでは、2人で音楽を作る楽しみを感じるだけでなく、表現力や音をよく聴く力など、ソロでも役に立つことをたくさん学ぶことができました。連弾をがんばった年は、ソロでも結果がついてきていました。
コンペや試験、受験など本番の前にステップに出ることが多かったです。温かい雰囲気で気軽に受けられ、講評もいただけるので、新しい曲に挑戦する時にも活用しやすかったです。アドバイザーの方や他の出演者との距離がとても近くて、実はコンクールより緊張したりしました!
5年生の時にテレビ局の企画の30人31脚に参加したことです。みんなで朝練も楽しかったです。
平日は2~3時間、休日は5~6時間を目標にしていました。小さい頃は長く続けられないので、30分を4回など、なるべく短い時間で集中できるように時間割を組んで、毎日練習するよう心掛けていました。
朝はハノンやチェルニーなど、基礎練習にあてていました。学校へ行く前に10分でもやるようにしていました。
幼稚園の年中~小学2年生くらいまでバレエを、その後小学4年生までチアダンスを習っていました。お友だちと行く習い事の時間は、いい気分転換になっていました。
小3の時に紫金山合奏団と、小4でプリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団と共演する機会がありました。すごく緊張したけれど、とても楽しかったのを覚えています。コンチェルトの室内楽版だったので、いつかフルオーケストラと共演したいという気持ちが芽生えたのはその時でした。
鶯の鳴き声が聞こえる自然豊かな環境で、学校までの坂道が長く急で大変でしたが、四季の花を見つつお友達とおしゃべりしながらゆっくり歩いたのが楽しい思い出です。
藝高ではレベルの高い、色々な楽器の友達に恵まれて、たくさんアンサンブルができたのが楽しかったです。伴奏も、多い時で10人くらい同時に持つほど、たくさんさせてもらいました。
片道1時間半の通学でしたが、朝7時半に友達とみんなで待ち合わせて練習室を借りて、練習後におしゃべりしながら授業に向かうのが楽しみで、それを目標に早起きしていました!
高校の友達3人で、それぞれの地元の横浜、広島、名古屋をツアーしました。午前の部は制服を着て、午後の部はドレスを着てコンサートをしました!各地で歓迎して下さり、人の温かさを感じました。コンサート翌日に観光するのも楽しみでした。
高1の時にポーランドのアカデミーのお披露目演奏会として、歴史ある大きな教会でコンチェルトをやったことです。教会は響きが独特で、不思議な気持ちになりました。コンサート中にも礼拝に来る人がいてびっくりした覚えがあります。
大学3年の時に藝大フィルハーモニア管弦楽団と奏楽堂で共演したことです。今回と同じラフマニノフのピアノ協奏曲第3番でした。
小学校の頃から、門下の先輩でもピティナで入賞している方を見て憧れていたので、自分もいつか特級まで受け続けられたらいいなと思っていました。
何度か聴きに行きました。中1で梅村知世さんがベートーヴェンの皇帝を弾かれた時は、ホールの前の方の席で聴いて感動し、憧れを抱いたのを覚えています。
実は、「一番になりたい!なんて聞いたことがない」と言われるくらいで(笑)。今回も、とにかく最後まで行って全曲弾きたい、という気持ちだけで臨んでいました。
配信が始まってすぐに、久々の友達や知らない方からもたくさん応援のメッセージをいただいてびっくりしました。ファイナルの前にも子どもたちからのお手紙も届いて、励まされました。私も二次の本番の朝など、他の方の配信を聴いてから行っていました。
私が小さい頃、グランプリの方などに憧れていた気持ちを思い出しました。私自身、表彰式などで並んで、グランプリの仲田みずほさんや梅村知世さんに写真やサインをいただいたのがとても嬉しく、今も大切にしています。
本番の曲のイメージにあわせて選びます。花柄や赤、ピンクのドレスが好きです。好きなブランドはAIMERです。
実はもともと背中のバッテンの肩紐はありませんでした。お友だちのおばあ様が、自由に弾きやすいようにと、ファイナル前日に祈りを込めて縫ってくださいました。
本番前はよく、ばっさり切って、気合いを入れます!
今年の6月に、来日中のアンドラーシュ・シフ氏のマスタークラスを受講する機会に恵まれました。隣で弾いてくださるシフ氏の演奏に鳥肌が立ち、音楽の素晴らしさを改めて実感しました。音楽が楽しいと心から思え、あまり結果を意識し過ぎることなく、ひとつひとつのステージを大切にしようと臨んだことが、受賞につながったのだと思います。
- 藝高=東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校
藝大=東京藝術大学
日程 | 内容 | 会場 |
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2020年 | ||
11/8(日) | リサイタル | カーサ・クラシカ |
11/21(土) | 読売新人コンサート(各音楽大学代表者) | 東京文化会館大ホール |
11/24(月) | ジョイントリサイタル
共演:秋山紗穂(2019特級銅賞) |
カワイ表参道コンサートサロンパウゼ |
11月未定 | 特級入賞者コンサート(ジョイント) | スタインウェイ&サンズ東京 |
2021年 | ||
1/17(日) | IMAブランチコンサート(室内楽)
共演:木ノ村茉衣(Vn)木田奏帆(Va)下島万乃(Vc) |
IMAホール |
2/6(土) | グランプリ褒賞リサイタル | ベーゼンドルファー東京 |
2/27(土) | フレッシュ・コンサート/コンチェルト
共演:神奈川フィルハーモニー管弦楽団 |
神奈川県立音楽堂 |
3/6(土) | グランプリ褒賞リサイタル | ヤマハグランドサロン大阪 |
3/7(日) | グランプリ褒賞リサイタル | ヤマハグランドサロン名古屋 |
3/28(日) | 入賞者記念コンサート(ソロと室内楽) | 第一生命ホール |
7月未定 | 特級入賞者コンサート(ジョイント) | カワイ表参道コンサートサロン パウゼ |
- 特級ファイナルまでの道のりを豊富な写真入りで紹介
- 特級・Pre特級・G級全国大会の採点表・投票経過を公表
- 課題曲チャレンジ チャレンジ達成者氏名を全員掲載