今年度もコンペティションが終了し、多くの参加者・指導者ともにたくさんの成長のエピソードがあったのではないでしょうか。
ピティナでは『優秀な指導者がいるからこそ優れた生徒が育つ』という理念の元、コンペティションまたはピアノステップで優秀な成績をおさめられた指導者、自己研鑽に励んでいる指導者を表彰しています。
今回の記事では今年度のコンペティションにおいて初めて指導者賞を受賞された先生方にフォーカスいたしました。
コンペティションを活用しながら、生徒とともに指導者自身のレベルアップに積極的に取り組む方々をご覧ください。
基礎情報
2018年度は505名の「指導者賞」受賞者があり、そのうち約1割にあたる54名の方が『初めて』の受賞でした。
「初めて」の指導者賞受賞者の年齢分布
40代での受賞者が最も多くなっています。最年少初受賞は今年は26歳の指導者の方2名が該当されました。
その曲の魅力を探求する過程を楽しめる、生徒さん一人一人に合わせたレッスンを
大学卒業後、クレッシェンド音楽教室に勤務しました。指導については分からないことも多い中、主宰の斉藤先生や先輩の講師にたくさんのサポートをいただきました。
ピティナのコンペは4つの時代を学ぶことができる良い機会ですので、時代ごとにテクニックや音色を弾き分けられるような指導を心がけています。年齢の低い生徒さんでも、イメージが膨らむような素敵な課題曲が多いので、生徒さんと一緒にイメージ作り(絵を描いたり、お話を考えたり、歌詞をつけたり)をしています。
結果にはこだわり過ぎず、色々な角度からその曲の魅力を楽しみながら探っていき、本番で悔いのない演奏ができるようにということを大切にしてきました。
指導者の立場となった時に、色々な方に支えられて本番を迎えることができていたことを再認識いたしました。生徒さんにもご家族にも安心してステージに立ってもらえるよう、技術面も精神面も大きな支えになれるようにと思っています。
保護者と一緒に向かう本番
生徒さんがコンペティションに参加するとなったら、なるべくみんなに『本番で満足のいく演奏が出来た!』という経験をしてほしいと思っています。
もちろん結果にはとらわれず、何よりその過程が大切だと日々伝えていますが、『練習の成果が出せた!』という気持ちに加えて『自分の名前が掲示された!嬉しい!』という気持ちも味わってもらい、もっと弾けるようになりたいという気持ちに繋げられたら......と贅沢ながら毎年願っています。
そのために私ができることは全て伝えよう!と保護者の方と3人4脚になり、全力で指導しています。参加させたからには、責任をもって指導しなければならないと、私自身非常に身が引き締まります。
初めてコンペに生徒を参加させてから指導者賞受賞まで何年?
「初めて」の指導者賞受賞者54名の皆さんの「初めて生徒を参加させた年から指導者賞受賞まで何年経過しているか」を調べてみたところ、最短で2年(初めて参加させたのが2017年度)でした。11年~15年という方が最も多く、続いて6~10年目ということで、指導者も「継続はチカラなり」であることが分かります。
1月から開始したグループレッスンで、生徒さん同士に「仲間意識」が芽生えたのか、今年は『仲間と一緒に』とコンペティションに挑戦した生徒さんが多くなりました。挑戦する子が多いということもあり、私自身も指導者賞受賞を目標に掲げ精一杯指導に力を注いだところ、結果がついてきたというところでしょうか。
もちろん、ピティナのコンペは7割の子が予選参加で終わってしまうもの。でも、結果が出ても出なくても、皆さん気持ちよく全力投球できた様子です。保護者の方から「うちの子がこんなに頑張れるって初めて知りました」「母と子の濃い時間を持つことができ、良い夏休みでした」とのとても嬉しいメッセージをいただきました。
私自身、ピティナに入会したのも遅く50代から、コンペに生徒さんを出したのもその年が初めてでした。50代からの挑戦というのは実は難しいことではなく、子育てもひと段落しているので自分のために時間をしっかり使えます。ピティナに入会して、ほぼ同時に取り組んだ指導者ライセンスとコンペでしたが、私にとっては指導者賞までの道のりの方がずっと長かったです。
ピティナのコンペティションとの出会いは、自分の子どもの参加がきっかけでした。音大を卒業してから結婚、引越し、子育てと、音楽と離れた生活をしていたため「こんな世界があるのか!」と驚いたことを覚えています。しかし、コンペは結果が出るもの。当時、親として高い成績をとらせることに夢中になり、結果的に子どもをピアノから離してしまったことは苦い経験として残りました。
それから年月が過ぎ、子どもが成長し巣立ちが目前と迫ってきたころに一念発起!指導者ライセンス、リトミック、ヤマハのグレードなど様々な学びを続ける中で、地方の子どもたちにも広い世界を知ってもらいたいという想いが強くなり、生徒・保護者と日々多くのコミュニケーションを重ねながらコンペティションに参加させてきました。より多くの生徒さんに音楽を長く楽しみ、美しいものに触れてほしいと願い指導してきたことが、今回の受賞につながったのだと思います。
ピアノ指導者に最も大切なコミュニケーション能力は、やはり年齢や経験を重ねる中で上達し、今の自分だからこそできる指導があると思っています。いくつになっても学びがあり、成長がある、素晴らしい職業ですね。
新人指導者賞受賞
新人指導者賞とは、これまでに「指導者賞」を受賞したことがない若い指導者のうち、コンペティションで活躍された方に与えられる賞です。(2010年度新設)40歳以下のピティナ会員の指導者を対象としています。
- 新人指導者賞は、指導者賞とは異なる賞です。受賞規定はこちら
指導を始められたばかりの方、ピアノ指導と他のお仕事をWワークでされている方、自身の演奏活動の研鑽も続けられている方など。これから益々指導者としての実績を積み上げていっていただきたい先生方です。おめでとうございます。
2018年度初指導、新人指導者賞受賞。 ラフマニノフ◎6つの小品 Op.11-2 スケルツォ
シューベルト◎6つのポロネーズ D824 Op.61 第4番 ニ長調
現在、大学職員として勤務しておりますので、平日は18時まで仕事があります。ピアノの練習はだいたい19時から22時半頃、生徒さんのレッスンをするのは休日または仕事の後、と世間でいう「Wワーク」の形ですね。
3年前くらいから指導に携わるようになりました。冷静に客観性を持って音楽を感じること、また、作曲家・作品の見方なども主観的・一方的にならないように注意することなどをこれまで先生からご指導いただいてきましたが、指導をする立場になってみて、改めて『演奏する側』からしか見ていなかったということに気づきました。
曲と向き合う時は『作曲家の側』に、レッスンの時には『生徒の側』に、相手の側に立つことの大切さを理解することができ、以前に比べ自身の演奏の幅も広がりつつあると感じています。
また、『自分のわかることしか伝えられない』ということを痛感し、自分自身の勉強がいかに大切であるかを学ぶ機会となりました。 生涯ピアノを続け、音楽の魅力を伝えていける指導者になっていきたいと思います。