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コンペ50回記念企画:わたしとコンペ 第4回:天野希咲さん

半世紀にわたり、ステージの上で自らの可能性に挑戦する多くのピアノ学習者とともに歩んできたピティナ・ピアノコンペティション。50回開催の節目に、それぞれの成長の軌跡と舞台に刻まれた数々の物語、そして未来へ続く歩みをたどります。
私は現在、島根大学の医学部で、病院での臨床実習に励む毎日を送っています。
私のピアノとの出会いは2歳の時でした。始めたばかりの頃は、ピアノを弾くよりもその下を走り回っていた記憶があるほど(笑)、天真爛漫な子供だったようです。初めてコンペに参加したのは幼稚園の年長の時(A2級)。舞台袖で自分の番を待つ時間がとにかく待ち遠しく、弾き終わるまで自分の演奏に「点数がつく」ことすら知らなかったほど、ただステージがあることに大きな喜びを感じていました。
その後、毎年「夏=ピティナ」というリズムが生活の一部になり、中学2年生でF級まで駆け抜けました。島根という地方に住みながら、高校生も参加するF級で全国大会に進出できた経験は、私の人生を大きく変えました。「正しく努力を重ねれば、どこにいても道は拓ける」――。この時の手応えが、後に国立医学部を目指す際の静かな自信の源流となりました。
A2級コンペ予選
コンペに初出場した幼稚園年長時実はピアノと並行して、4歳から「そろばん」にも打ち込んでいました。小学6年生で暗算の最高位である十段を取得し、全国2位をいただいたこともあります。
一見異なる分野ですが、私の中では「一発勝負の精神性」において非常に似ていました。特に、本番が始まってまだ呼吸が整っていない瞬間にミスが出やすいという特徴は、ピアノもそろばんも共通です。「1分1秒を無駄にせず、極限の集中状態でパフォーマンスを出す」という訓練を、私は二つの習い事を通じて幼少期から積み重ねてきたのだと感じています。

医学部の生活は多忙ですが、私は今も「隙間時間の使い分け」を徹底することで、ピアノと学業を両立しています。
| 5分〜10分の隙間時間 | 複雑な指番号の確認や、苦手な数小節だけのピンポイント練習。 |
|---|---|
| 30分以上のまとまった時間 | 曲全体の構成や表現を深める「思考」の練習。 |
サークル棟のピアノに向かう前、あらかじめ楽譜に付箋を貼り、「この5分ではここを直す」と決めておきます。これは医学の勉強や英検1級の対策でも同じです。スマホのメモ帳に「今やるべきこと」をリスト化し、自分の集中力の限界や時間帯を自己分析しながら割り振っています。
私にとってピアノは、脳を活性化させる「思考のスイッチ」でもあります。実は、ピアノを練習した直後の勉強が、一番スムーズに頭に入るように思います。あえて集中したい勉強の前に5分だけピアノに向かう。そうすることで感性と理性が響き合い、しなやかな両立が可能になっています。
日本医学教育学会にて現在、私は臨床実習で患者さんと向き合っています。医学もピアノも、膨大な知識の蓄積と、現場(本番)での高いパフォーマンスが求められる点は同じです。
ただ、ピアノには「弾き直しができない」という独特の緊張感があります。一度出した音は消せません。このプレッシャーの中で、小学1年生の時の「演奏が止まった」失敗や、本番中に「椅子がずれた」アクシデントなど、数々の困難をどう乗り越えるか。その都度、原因を分析し、リスクを想定して備える習慣がつきました。
臨床の場でも、教科書通りにいかない場面は多々あります。パニックにならずに「今の状況で最善は何か」を考え、冷静に対応できるのは、何度もステージという厳しい場所で自分を律してきた経験があるからこそだと感じています。
将来、医師として患者さんと向き合う際、ピアノを通じて磨いた「想像力」――楽譜の裏側にある感情を読み取る力――を活かし、患者さんの言葉にできない思いに寄り添える診療を行いたい。それが今の私の目標です。
臨床実習にて今、コンペティションに挑んでいる皆さん。 たとえ音楽とは別の道を目指すとしても、ピアノで培った集中力や客観的な分析力は、人生を支える土台になると思います。
勉強で行き詰まった時も、音楽はそっと心を潤してくれます。専門にするかどうかにかかわらず、ぜひ音楽に触れ続けてください。ピアノという「スイッチ」があるからこそ、他のことも楽しく乗り越えられる。そんな素敵な相乗効果が、皆さんの未来にもきっと訪れるのではないかと思います。
F級コンペ全国決勝大会
愛用のレッスンバッグ 
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