ピティナ・ピアノコンペティション 特級

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  • 視聴時間に応じて投票ポイントが加算されます。1人分の演奏時間(約50分)で1ポイント、MAX7ポイントまでポイントがたまります。
  • お昼休みの時間は視聴時間として加算されません。
  • 投票は一度のみ可能です。
  • セミファイナル・ファイナルのポイントを合算して「オンライン聴衆賞」が決定します。セミファイナルのみでの結果は公表されません。
1.村上 智則
10:30
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  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」 第1楽章
    ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827) が生涯に残した32曲のピアノソナタは鍵盤音楽の「新約聖書」と呼ばれる、ピアニストにとって最も重要なレパートリーのひとつです。愛称「テンペスト」で調べる第17番は、非常に充実した中期の創作。アントン・シンドラーの「ベートーヴェン伝」において、作曲家自身が「この作品を理解したければ、シェイクスピアの<テンペスト(嵐)>を読め」と語ったのが愛称の根拠といわれていたこともありますが、現在ではこの説は疑わしいとされます。ただ、この作品にみられる強いドラマや激情、幻想的な曲想にはそう感じさせるのも不思議でないと感じさせる魅力があります。中期を代表する傑作ソナタです。
  • シューマン:フモレスケ 変ロ長調 Op.20
    ショパンやリストとともにロマン派を代表するドイツの作曲家、ロベルト・シューマン(1810-56)は、少年時代から文学に親しみ、ロマン派文学に強く影響を受けた性格的な作品を多く残しました。1838 ~39年頃のウィーン滞在中に「アラベスク」などとともに書かれたといわれる「フモレスケ」も、「クライスレリアーナ」などと同じ構造を持つ文学的・詩的作品集ですが、フモレスケの持つ基本的な曲想は陽気で幸福感に満ち、1840年に結婚することになるクララ・ヴィーク(のちのクララ・シューマン)との愛の手ごたえのようなものが感じられます。「フモレスケ」は「ユモレスク」のことで、喜怒哀楽さまざまな感情が交錯した状態を表し、作曲家自身は「気楽さと機知との幸福な融合」と述べています。シューマンらしい感情の起伏が、連続して演奏される5つの部分で描かれた30分近い大作です。
  • メシアン:幼子イエスに注ぐ20のまなざし より 第10番「喜びの聖霊のまなざし」
    フランス現代の作曲家、オリヴィエ・メシアン(1908-1992)は、20世紀を通じて諸分野に多くの作品を残す傍ら、パリ音楽院教授としてブーレーズやシュトックハウゼンら後進も指導しました。彼のピアノ作品は、妻でピアニストのイヴォンヌ・ロリオ(日本人の門弟も多く、本日の審査員、菅野潤先生もその一人)を想定して書かれたものが多く、代表作「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」もロリオが初演しています。第10曲「喜びの精霊のまなざし」は、曲集の中で最も有名な作品。「熱狂的な踊り、角笛の陶酔的な調べ、精霊の激情・・・イエス・キリストの霊における幸福な神の愛の喜び・・」彼の独自の音楽語法を用いて、キリスト教の神性を象徴的に音楽で表現しようとした意欲的な作品であり、音楽による深い信仰表現が魅力的な大作です。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
愛媛県松⼭市出⾝。愛媛県⽴松⼭東⾼等学校を経て、現在東京藝術⼤学4年。ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝⼤会にて、A1級銅賞、B級⾦賞、C級ベスト賞、D級ベスト賞、Jr.G級ベスト賞、2020年特級セミファイナリスト。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.リストに会って、生演奏を聴いてみたいです。

Q.好きな本
A.中山七里「さよならドビュッシー」

Q.音楽以外の好きな科目
A.技術・家庭科

Q.ピアノをやっていてうれしかったことは?
A.自分が想像している情景や伝えたい心情がお客様に伝わったとき。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.人の心に寄り添うような演奏ができる音楽家になりたいです。

2.今泉 響平
11:25
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  • J.S.バッハ=ペトリ:アリア「羊は安らかに草を食み」 BWV208-9
    J.S.バッハ=ブゾーニ:コラール前奏曲「今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ」
    音楽の父ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)の作品は、あらゆる形式にわたりますが、後世の音楽家たちは彼の作品に敬意を表しながら、別の楽器や編成で演奏できるように多くの編曲を残しました。エゴン・ペトリ(1881-1962)やフェルッチョ・ブゾーニ(1866-1924)は19世紀末から20世紀前半に活躍した偉大なピアニストで、バッハの作品をピアノ用に編曲しました。ペトリが編曲した「羊は安らかに草を食み」は、「楽しき狩りこそわが喜び(バースデー・カンタータ)」という世俗カンタータの中の1曲です。このカンタータはザクセン選帝侯の誕生日を祝うための作品で、「羊は安らかに草を食み」は、領主を羊飼い、人々を羊にたとえながら「良い羊飼いのもとでは、羊は安らかに草を食むことができる」という意味を持たせた一曲ですが、のどかで優しいまなざしが印象的な美しい小品です。「今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ」は、ブゾーニの編曲。バッハ=ブゾーニといえば、無伴奏ヴァイオリンパルティータからの「シャコンヌ」が最も有名ですが、「今ぞ喜べ」はオルガンのためのコラール前奏曲をピアノ編曲した小品で、これも往年の巨匠たちによって愛奏された佳作です。なお、ペトリはブゾーニの弟子で、ペトリによるブゾーニのこの曲の見事な録音も残されています。この時代の巨匠たちがお互いにリスペクトをもって互いの編曲作品に注目していたことが分かります。今泉さんが尊敬するラフマニノフやホロヴィッツも生きた大ピアニストたちの時代の空気を感じながら、バッハの世界に浸ることができる2曲です。
  • ハイドン:ソナタ ロ短調 Hob.XVI/32
    フランツ・ヨゼフ・ハイドン(1732-1809)は、モーツァルトやベートーヴェンの先輩にあたる古典派音楽の基礎を築いた作曲家です。「ソナタ ロ短調 Hob.XVI/32」は、彼の唯一のロ短調ソナタで、第1楽章ではトリルの優雅な主題が印象的。第2楽章はメヌエットートリオ。終楽章は冒頭から連打が特徴的で、ドラマティックに締めくくられるプレストです。編曲作品の中で、その純な響きがいっそう際立つことでしょう。
  • フランク=コルトー:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ イ長調 (全楽章)
    ヴァイオリンソナタの名作の中でも一二を争う傑作が、セザール・フランク(1822-90)の作品です。フランクは、オルガニストとして活躍したほか、パリ音楽院教授としてショーソンやダンディを育て、交響曲ニ短調やピアノ五重奏曲、ピアノ曲「前奏曲、コラールとフーガ」などの名曲を残しています。ヴァイオリンソナタ(ヴァイオリンとピアノ)をピアノ1台で演奏できるように編曲したのは、フランス往年の巨匠アルフレッド・コルトー(1877-1962)です。コルトーは言わずと知れたフランスを代表する大ピアニストで、このフランクのヴァイオリンソナタについても、ヴァイオリンのジャック・ティボー(ロン・ティボー国際コンクールにも名を残す名手)との名演を録音していますが、いっぽうでピアノ用の編曲も手掛け、この珍しいアレンジを残しました。全4楽章、めったに聞くことのできない編曲作品の演奏となります。
  • イングランド民謡=ルーウェンサール:グリーンスリーブス
    さらに演奏されるのは、イングランドの伝統的な民謡「グリーンスリーブス」を、知る人ぞ知るアメリカのピアニスト、レイモンド・ルーウェンサール(レーヴェンタールとも、1923-88)が編曲した珍しい一曲で、実はこの作品には正式な楽譜が残されていないところ、本日のコンテスタントである今泉響平さんが採譜(録音を聞きながら楽譜に起こすこと)して出版したという気合の入った事情があります。ルーウェンサールは、謎も多い神秘的なピアニストですが、前述のコルトーにも師事しており、今泉さんのプログラムは、20世紀に綿密に張り巡らされた巨匠・名匠の偉大な系譜に思いを巡らせながら、音楽を通じて100年後の私たちに彼らが語り掛ける、時代を超えたロマンティックなメッセージとなっています。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
福岡県福岡市出⾝。チャイコフスキー記念国⽴モスクワ⾳楽院を経て、同⼤学院課程には最⾼得点で⼊学・修了。ラザール・ベルマン国際ピアノコンクール(イタリア)第1位ほか国内外のコンクールにて多数受賞。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.ホロヴィッツ。作曲家・編曲家としてのことを色々聞きたい。

Q.音楽以外の好きな科目はなんでしたか?
A.数学

Q.ピアノをやっていてうれしかったことは?
A.難しい曲が弾けたとき。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.何か研究に没頭できる音楽家

3.進藤 実優
12:40
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  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第5番 ハ短調 Op.10-1 第1楽章
    ベートーヴェンの32曲のソナタのうち、5~7番の3曲は「Op.10」という連作で、1797年に出版されています。第1~4番で4楽章構成を貫いていたベートーヴェンは、第5番で初めて3楽章構成を採ります。これは、96年頃のプラハ・ベルリン旅行で改めて18世紀後半の古典的様式に触れたからともいわれます。第5番は、交響曲第5番「運命」やソナタ第8番「悲愴」、最後のソナタ第32番などと同じ「ハ短調」で書かれています。第2主題に現れる変ホ長調とともにベートーヴェンを象徴する調性とも言われます。初期ベートーヴェンのソナタ形式への高い適応を示す劇的な名作です。
  • ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
    「ピアノの詩人」フレデリック・ショパン(1810-49)については、今さら多くの解説を必要としないでしょう。故郷を離れてフランスなどで活躍した彼は、いっぽうで故国ポーランドへの愛情を常に抱いて生涯を過ごし、ポロネーズやマズルカなどポーランドの舞曲を題材とした作品を数多く作曲しています。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は、もともとオーケストラとピアノのために書かれた「華麗なる大ポロネーズ」の後に、ピアノ前奏として「アンダンテ・スピアナート」が作曲され、1836年に両者をピアノ独奏で演奏できるように出版されたものです。現在は、ピアノ独奏で全体を演奏するのが最も一般的で、前半のアンダンテ・スピアナートは、静謐で「スピアナート(滑らか)」な序奏部分。ファンファーレの後でポロネーズに入ると一転して華やかになり、雄大で伸びやかな曲調のまま曲を閉じます。いかにもショパンらしい雄大で優美な作品です。
  • ショパン:ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
    ショパンの作品のなかでも、後期、作品番号50~60番台にはピアノ音楽史の頂点をなす傑作が並んでいます。彼は基本的に小品の人だったので、せいぜい10分程度までの作品が多くを占め、規模の大きなピアノソナタは3曲しか残されていませんが、特に第2番と第3番は傑作とされています。「ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58」は、1844年夏に作曲された、この分野屈指の名作です。華やかで堂々とした第一主題と優美な第二主題からなる第1楽章、軽快な第2楽章、ノクターンのように美しい第3楽章、情熱的で重厚なフィナーレをもつ第4楽章からなり、ソナタ形式という伝統的なスタイルとロマン派音楽の可能性を大胆に融合させた、ショパンならではの巨大なソナタとなっています。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
愛知県⼤府市出⾝。モスクワ⾳楽院付属中央⾳楽学校卒業。第18回ショパン国際ピアノコンクールの7⽉予備予選を通過し、2021年10⽉の本⼤会に参加予定。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.ショパンの作曲している様子を遠くから眺めていたい。

Q.好きな本
A.プーシキンの詩集

Q.音楽以外の好きな科目
A.英語・外国語

Q.ピアノをやっていて一番楽しいことは?
A.曲に対する理解が深まったとき。音楽を聴いているとき。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.作曲家の思いを最大限に汲み取り、それを伝えられる音楽家になりたい。

4.原田 莉奈
14:55
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  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109
    ベートーヴェンの名作群であるピアノソナタ集の中でも、最後に作曲された第30~32番の3つのソナタは特に傑作に数えられ、作曲家が到達した境地がいかんなく発揮されているといわれています。「ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109」は1820年の作品で、3つの楽章から成っています。第1楽章は、冒頭からすぐに始まる4分の2拍子・ヴィヴァーチェ(生き生きと)の第一主題と、その後に続く4分の3拍子・アダージョ・エスプレッシーヴォ(ゆっくりと表情豊かに)の第二主題の楽想が絡み合う変則的なソナタ形式。第2楽章は、第1楽章から切れ目なく演奏され「プレスティッシモ(きわめて速く)」の指示があり、決然と開始され動きを持った楽章です。第3楽章は、「心からの感動を持ち、充分な歌に満ちて」と冒頭に指示されたバリエーションで、主題の提示のあとに6つの変奏が続いています。ベートーヴェン後期の豊かで美しい楽想に満ちあふれたソナタとなっています。
  • シューマン :ピアノソナタ第1番 嬰へ短調 Op.11
    ロベルト・シューマンは、第1番の項で紹介した「クライスレリアーナ」や「フモレスケ」のような文学的な背景を持った作品集以外に、ピアノソナタも3曲作っています。「ピアノソナタ第1番 嬰ヘ短調 Op.11」は、1835年頃までに完成した演奏時間30分を超える大作で、4つの楽章から成ります。シューマン自身はピアノソナタという形式そのものに、ある種の限界を感じていたようで、より柔軟で自由な形式、文学や詩と融合した独特の音楽世界に踏み込んでいくことになりますが、第1番は、ソナタという枠の中にも豊穣なロマンティシズムを溢れんばかりに盛り込んだ濃厚な作品となっています。第1楽章は長大で雄渾な序奏の後に、スペイン・アンダルシア地方の舞曲「ファンダンゴ」をもとにした激情的な性格が支配しています。第2楽章は、自身の歌曲をもとにしたアリア。内向的で美しい、夢見るような緩徐楽章です。第3楽章は、アレグリッシモのスケルツォの中間部に、「ゆっくりと、ブルレスカ風に、けれど盛大に」と題されたポロネーズ風の間奏曲が挟まれます。第4楽章はロンド形式ながら、種々の楽想が盛り込まれ、この大作を締めくくるにふさわしい長大なクライマックスを築かれます。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
奈良県奈良市出⾝。京都市⽴京都堀川⾳楽⾼等学校・東京藝術⼤学を経て、現在同⼤学院修⼠課程2年。第15回東京⾳楽コンクールピアノ部⾨第2位ほか⼊賞多数。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.シューマン夫妻に会ってレッスンを受けて、夕食をご一緒させてもらって、シューマンとクララの距離感、空気感を近くで見ていたい。

Q.影響を受けた本
A.ネイガウス「ピアノ演奏芸術」、「ピアニストが語る」シリーズ

Q.音楽以外の好きな科目
A.体育, 美術

Q.ピアノをやっていて一番嬉しかったこと
A.1500人くらいの満員のお客様の前でコンチェルトを演奏できたこと。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.大きな愛情を持った音楽家になりたいです。自分の奏でる音楽で聴いてくださる人の心がより豊かになるといいなと思います。

5.五条 玲緒
15:55
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  • J.S.バッハ:イタリア風アリアと変奏 BWV989
    ヨハン・セバスティアン・バッハの鍵盤作品の中では比較的珍しい「イタリア風アリアと変奏 BWV989」が演奏されます。これは有名な「ゴルトベルク変奏曲 BWV988」の次の作品番号を持ちますが、成立はずっと早く1709年、バッハがワイマールで宮廷楽師・宮廷オルガニストとして活躍していた頃とされます。当時、イタリアではベルナルド・パスクィーニやジローラモ・フレスコバルディの鍵盤楽曲が知られ、バッハも彼らの作品を知っていたと考えられています。また、バッハにはヴィヴァルディやマルチェッロの協奏曲を編曲した作品もあり、イタリアの音楽への憧れは強かったようです。このような背景のもとに作られたこの曲は、優雅なアリアに始まり、10個の変奏が展開します。ある意味ではゴルトベルク変奏曲にも近い構成です。第10変奏でアリアに近い雰囲気に戻りますが、ゴルトベルクのように同じ形に戻るわけではなく、あくまでも「変奏」として和声的な構造を保ちながら雰囲気を維持しています。イタリアの爽快な風情と繊細な叙情を併せ持つ佳曲です。
  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a 「告別」
    ベートーヴェンの「ピアノソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a <告別>」は、彼の最大のパトロンであったオーストリア大公ヨハン・ヨゼフ・ルドルフに献呈されたユニークなソナタです。曲名は、ベートーヴェンが第1楽章に添えた「Lebewohl 告別」の標題に由来しており、冒頭の3音には、「Le-be-wohl」の言葉が歌詞のように添えられ、この3音が、ある種の動機として楽章を支配しています。第2楽章には「不在」の標題が添えられ、単純な二部構成ながら、斬新な調性感と和声感を持ち、短くも内容豊かな展開を示していきます。終楽章は「再会」と名付けられ、印象的な強和音で開始し、第2楽章に続けて演奏されます。再会の喜びが、決然として輝かしい雰囲気の中に描かれており、中期から後期へと足を踏み入れる新たな創作への気配も見られる充実したソナタとなっています。
  • ラフマニノフ:エチュード「音の絵」 Op.39 より 第2、3、5、6、9番
    セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)は、第2番の今泉響平さんの項で数多く登場した19世紀末から20世紀前半に活躍したコンポーザー・ピアニストの一人、いやそのジャンルを代表する大芸術家といってよいでしょう。巨大な体躯から颯爽と繰り出されるピアニズムは、豪快かと思いきや端整の一言で、自作自演の録音に聞かれる音楽のつくりは誰にも真似できないユニークさを持ち、後に続く大ピアニストたちが「ラフマニノフは別格」と口をそろえたほどの圧倒的な演奏と解釈の名手でした。彼のそんな魅力がいかんなく発揮された自作のひとつが、練習曲集「音の絵」です。題名のとおり、単なる練習曲ではなく、絵画的・色彩的な演奏効果をもって提示される見事な作品集となっています。作品39を作曲した1916~17年頃、ラフマニノフには辛く悲しい経験が連続します。予備役としての召集と戦争体験、学生時代から刺激を受け合った盟友スクリャービンや恩師タネーエフ、そして最愛の父の死去、さらには革命が近づきいよいよ祖国と決別する日が近いことも感じていました。作品39の「音の絵」にはこうした時期の陰鬱でセンチメンタルな叙情が強く刻印されており、ラフマニノフの心象風景を音楽によって色濃く伝える名曲となっています。今日は全9曲の中から演奏者によって選りすぐられた5曲が演奏されます。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
静岡県静岡市出⾝。東京藝術⼤学⾳楽学部附属⾳楽⾼等学校を経て、現在東京藝術⼤学3年。ポッツォリーノ国際コンクールカテゴリーD、オレッジョピアノコンクール(共にイタリア)第1位。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.ラフマニノフの生演奏を聴いてみたい。

Q.好きな映画
A.スターウォーズ

Q.音楽以外の好きな科目
A.理科, 体育

Q.ピアノをやっていて一番嬉しかったこと
A.新しい解釈を思いついた時。お客さんの前で演奏できる時はいつでも嬉しいです。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.作曲家が作り上げた作品の魅力を共有して、聴いてくれた人の日常に喜び、悲しみ、驚き、、などなど少しでも彩りを添えられるようになれたらな、と思います。

6.福田 優花
17:10
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  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3
    ベートーヴェンのピアノソナタも、本日は、初期・中期・後期とそれぞれの時期の名作を時間軸でたどることができる充実したプログラムとなりましたが、「ピアノソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3」は、村上智則さんが午前中に演奏した第17番「テンペスト」と並び、1802~03年頃に作られたといわれる「Op.31」という作品集におさめられた中期の豊かな作品群のひとつです。この頃のベートーヴェンは、いよいよ耳の病気が極限状態に達し、人生の苦悩にまみれながらも、音楽を通じて生きる意味を模索していた時期でした。音楽的にもより一層の画期的な工夫や挑戦が現れます。第18番のソナタは、それまでのソナタに一般的だった緩徐的(ゆっくり)の楽章を持たず、アレグロ/スケルツォ/メヌエット/プレストという4つの楽章から成っています。のちの交響曲にも通じる実験的な要素がふんだんに盛り込まれる中に、ベートーヴェンらしい雄大さや愛らしさが満ちて、聴きごたえのあるピアノソナタとなっています。
  • ショパン:スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54
    ショパンは「ノクターン」「即興曲」「ワルツ」「ポロネーズ」などそれまでにも書かれていたジャンルに、その意味を根底から見つめ直すような名作をそれぞれ残して性格小品の分野を全く異なるレベルに押し上げましたが、中でも、それぞれ4曲ずつからなる「スケルツォ」と「バラード」は、その個性的で独創性豊かな内容によってショパンを唯一無二の存在にしたジャンルといってもよいでしょう。ここではスケルツォの最後の傑作第4番が、そして次の演奏者によってバラードの傑作第4番が演奏されるというのはなんと贅沢なプログラム上の偶然でしょうか。もともと「スケルツォ」にはジョークやからかいといった意味がありますが、音楽上の意義を確立したのは、ベートーヴェンが交響曲や各種ソナタの楽章のひとつに用いたところからでしょう。そこからシューベルト、メンデルスゾーン、シューマンらが独自にその世界を開拓しました。けれどショパンほど圧倒的な独自性をもってスケルツォを作曲した作曲家は他にいません。ドラマティックで躍動感のあるテーマと、内向的で抒情的なテーマを織り交ぜた4曲のスケルツォはどれもがピアノ音楽の中で高い人気を誇り、特に第4番ホ長調は、後期の傑作として、その気高さと華麗さによってこのジャンルの到達点とされています。
  • スクリャービン:ピアノソナタ第3番 嬰ヘ短調 Op.23
    コンポーザー・ピアニストたちが華麗に腕を競った20世紀前半のロシア、ラフマニノフと並び、アレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)もこの分野を代表する名手でした。タネーエフやアレンスキーに作曲を師事し、モスクワ音楽院の同級生にはラフマニノフがおり、卒業試験のピアノの成績は、ラフマニノフが1位、スクリャービンが2位だったといいますから、ものすごい時代です。当初はショパンなどの影響を受けたロマン派的な作風を示していましたが、活動の中期で哲学や神智学に傾倒し、徐々に調性音楽から離脱して、独自の作風を確立していきます。福田優花さんの1次・2次、そしてこのセミのプログラムはこの変遷を丁寧に追っています。「ピアノソナタ第3番嬰ヘ短調 Op.23」は、1897年から98年にかけて作曲された<初期>を代表するソナタで、彼のその後の作風への萌芽を早くも見て取ることができます。曲は4つの楽章からなり、彼自身が「第1楽章は、気ままで荒々しい魂が、苦悶や闘争の渦中に投げ込まれるさまを表す。第2楽章は、あからさまに束の間の、思い違いの小休止。苦悩することに疲れた魂は、あらゆることと引き換えに、忘れること、歌うこと、そして飾り立てることを求める。リズムの軽やかさも和声のかぐわしさも、見てくれだけにすぎないのに、そこでは不安で遣る瀬無い魂がきらめいている。第3楽章は、甘美で物悲しい情感の海。すなわち、愛、悲しみ、ぼんやりした欲望、曰く言いがたい思い、ほのかな夢の幻影…。終楽章では、存在の深みから創造的な人間の恐ろしげな声がして、その人間の凱歌が響き渡る。しかし、まだ人間は頂点に立つには弱すぎて、時に挫折を感じながら、非有の奈落に沈み込む。」と表現しています。いる。第3楽章については「ここで星たちが歌うのだ!」とも記しています。この曲にこめられた思いと、そこから中期・後期にいたる作曲家の心情の変化は、セミファイナル進出時の福田さんのインタビューで非常に詳しく語られていますので、こちらも必聴です。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
京都府京都市出⾝。京都市⽴京都堀川⾳楽⾼等学校を⾸席で卒業、東京藝術⼤学器楽科を経て同⼤学院修⼠課程を修了。第9回せんがわピアノオーディション最優秀賞。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.スクリャービン:彼が、彼の思想を理解する親しい人にのみ話したという神秘的な思想の話を(こっそり、バレないかたちで)傾聴したい。

Q.好きな映画
A.「メメント」、「ダンサーインザダーク」

Q.音楽以外の好きな科目
A.国語, 技術・家庭科

Q.ピアノをやっていて一番嬉しかったこと
A.ホールで演奏する際、弱音が遠くまで響いていることに気がついた瞬間。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.連綿と続くクラシック音楽の歴史をこの先も繋いでいく礎の一部となれるような音楽家。

7.野村 友里愛
18:05
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  • W.A.モーツァルト:ピアノソナタ第3番 変ロ長調 K.281
    ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)は、クラシック音楽になじみのない方にも、ベートーヴェンやショパンと並んで、最も知られた作曲家でしょう。音楽家だった父の手ほどきを受けながら神童として早くから作曲や演奏の才能を示したことは広く知られ、惜しくも30代で亡くなりましたが、多くの名曲を遺しました。ピアノソナタの分野では一般に18曲が知られ、「ソナタ第3番 K.281」は、1775年頃にミュンヘンで書かれたといわれる初期の6つのソナタのひとつで、中でも第3番は、演奏者の熟達が必要な充実した作品となっており、音楽学者アインシュタインは「はじめの2つの楽章はハイドン以上にハイドン的だが、第3楽章で突然に本当のモーツァルトが目覚める」と書いています。快活な第1楽章、「アンダンテ・アモローソ(愛らしく)」と添えられた親密で優美な第2楽章、千変万化して多彩な表情を見せる終楽章から成ります。
  • ショパン:バラード第4番 ヘ短調 Op.52
    ピアノ音楽に多くの傑作を残したショパンには、前項の「スケルツォ」と並んで、「バラード」と呼ばれる分野にも4つの名曲が並びますが、中でも「バラード第4番 ヘ短調 Op.52」は、先日のショパンコンクール予備予選でも最も多く演奏された名作中の名作です。単純な情感ではなく、寄せては返し、ときにためらい、影が差し、純粋さと激情とが高度に融合した約11分。そこに言葉も解説も要りません。ただ、ショパンの描く物語をじっくりとお聴きください。
  • ラフマニノフ:リラの花 Op.21-5
    第5番の項でも詳しく紹介したセルゲイ・ラフマニノフは、コンポーザー・ピアニストの例にもれず、多くの自作・他作をピアノ用に編曲しており、今日、ピアニストたちの重要なレパートリーとなっています。自作の歌曲「リラの花(ライラック)Op.21-5」は、ラフマニノフが結婚した1902年に作曲された歌曲集Op.21の中の1曲で、作曲家自身も大変気に入っていた作品です。「幸福はリラの花の中に住んでいる」-ラフマニノフの故郷、5月のイワノフカには、ライラックが一面に咲き乱れると言います。作曲家の美しい心象風景に触れる繊細な歌曲です。
  • ラフマニノフ:ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.36(1931年版)
    続く「ピアノソナタ第2番」は、ラフマニノフのピアノ独奏曲の代表的な存在で、当初、1913年に作曲されましたが、極度に神経質で繊細だった彼は、作曲活動において、しばしばその「改訂」(その多くは大幅な短縮)を行っています。このソナタも1931年に改訂され、シンプルに書き換えられていますが、このことについて彼自身は「ショパンのソナタは19分で、それだけですべてを表現しつくしている」と語っています。第1楽章はソナタ形式ですが、自由な変奏と豊かな和声によって、形式にとらわれることなくドラマティックに展開していきます。第2楽章は極めて美しく幻想的な雰囲気で展開され、アタッカで続けて開始される第3楽章は雄大な流れと自由な展開を持ち、きらびやかに幕を閉じます。ショパンやシューマン、リストやブラームスなどと並び、ロマン派のピアノソナタを代表する一曲です。
  • 山中惇史:翡翠の時(邦人新曲課題)
愛知県名古屋市出⾝。現在、⾓川ドワンゴ学園N⾼等学校1年。ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝⼤会において、2015年B級⾦賞、2016年C級ベスト賞、2018年Jr.G級ベスト賞、2019年F級⾦賞及び聖徳⼤学川並弘昭賞を受賞。
◆ アンケートより

Q.タイムマシンに乗って作曲家に1人会いに行けるとしたら?
A.ショパンに会って、「こんな素敵な曲をたくさん創ってくれてありがとうございます」 と伝えたいです。

Q.好きな映画
A.漫画「この音とまれ!」

Q.音楽以外の好きな科目
A.国語

Q.ピアノをやっていて一番嬉しかったこと
A.ピティナのB級ではじめて金賞を取ったことが今でも忘れられないくらい嬉しい思い出です。夢みたいでした。

Q.どんな音楽家になりたいですか?
A.人の心を動かせるような音楽家になりたいです。音楽は国や時代を超えて繋がることができるので、世界中の多くの方と音楽を通して交流することが私の夢です。

★新曲課題 タイトル
「翡翠(かわせみ)の時」(2021)

演奏時間4分程度

◆ 作曲家・山中惇史先生よりメッセージ
特級セミファイナル 出場の皆様へ

舞台にピアノと一人、姿はないけれど作曲家と。その場で音楽が生み出される瞬間瞬間が、美しくも儚い、そしてどこか非日常的な「切り取られたような時空間」のように感じます。そんな空間を創り出し得る皆様のイマジネーションへの可能性に胸を高鳴らせながら作曲しました。現代に生まれた音楽だからといって、特別に感じずに、ありのままの感性を聴かせていただけることを期待しています。

「翡翠の時」 作品に寄せて

小学校からの帰り道、生茂る木々を分け入った先に小さなほとりがあり、枝の先に翡翠が。息を飲むように、そっと覗き見たエメラルドグリーンの美しさは今でも脳裏に鮮烈に焼き付いています。

コンクールという極限状態にさらされる場に音楽への愛を携え挑もうとする皆さんを思った時、何故かその翡翠の凛とした姿が頭によぎりました。この上なく純で、一瞬で過ぎ去る幻の時。

ファンタジーを持って演奏していただければ幸いです。

山中惇史(やまなか・あつし):東京藝術大学音楽学部作曲科・ピアノ科両科を卒業。同大学音楽研究科修士課程作曲専攻修了。第26回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第1位。ピアニストとしては2018年にリサイタルデビュー、また共演者として信頼も厚く国内外の著名なアーティストから指名を受け共演を重ね、参加した各CDはレコード芸術誌にて特選盤、準特選盤に選出されている。東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、群馬交響楽団など多数のオーケストラとの共演、作品が演奏されている。東京芸術大学非常勤講師。
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